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インボイス制度をフリーランス向けに解説:エンジニアが登録すべきかどうかの判断基準まとめ

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インボイス制度は、フリーランスとして働くうえで避けて通れないテーマです。
名前は聞いたことがあっても、実際に「自分は登録すべきなのか?」「登録しないと何が起こるのか?」といった具体的なポイントまでは、よく分からないという方も多いのではないでしょうか?

特にフリーランスエンジニアの場合、エージェント経由の案件が中心だったり、BtoB取引が多かったりするため、インボイス制度の影響を受けやすい職種 といえます。
登録するかどうかの判断が、その後の案件獲得や単価、契約継続に関わってくるケースもあります。

この記事ではまず、フリーランスエンジニアが知っておきたい「消費税とインボイス制度の基本」からお伝えします。
そのうえで、

・インボイスに登録しない場合に起こること
・登録した場合のメリット・デメリット
・エンジニア特有の事情を踏まえた判断基準
・今からできる準備
を、順番に分かりやすく解説していきます。



制度への理解が曖昧なままだと、思わぬ不利益につながりかねません。
この機会にインボイス制度をしっかり理解し、フリーランスとしてより安定して働けるよう準備を進めていきましょう!

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まず押さえたい!フリーランスエンジニアと消費税・インボイス制度の基本

フリーランスエンジニアとして働くうえで、まず理解しておきたいのが「消費税との関係」 そして 「インボイス制度とは何か」 です。

ここをおさえておくと、
「登録したほうがいいのか?」
「登録しないとどうなるのか?」
といった判断が、ぐっとしやすくなります。

フリーランスエンジニアと消費税の関係

消費税は、商品を買ったりサービスを受けたりするときにかかる税金です。
普段はあまり意識しませんが、フリーランスになると あなた自身が“事業者”として、消費税を預かる立場 になります。

つまり、

  • 消費者 → 消費税を負担する側
  • 事業者(フリーランス) → 消費税を預かり、国に納める側

という役割分担になるわけです。

課税事業者と免税事業者の違い

フリーランスエンジニアは、次のどちらかに分類されます。

■ 課税事業者(消費税を納める必要がある)

  • 原則として「2年前」の課税売上高が1,000万円超
  • または特定期間(1年前の1/1〜6/30)の売上が1,000万円超など

■ 免税事業者(消費税の納税は不要)

  • 2年前の売上が1,000万円以下
  • 特定期間の条件を満たさない場合 など



「売上1,000万円」というのが大きな基準ですが、ここで注意したいのが
“売上が少ないからといって、消費税を請求できないわけではない”
という点です。

エンジニアはクライアントから業務委託として報酬を受け取りますが、その報酬に消費税を上乗せするのは法律上認められています。
事前に“税込か税抜か” だけ確認しておけばOKです。

インボイス制度とは?エンジニアがまず知っておきたいポイント

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、

「正しい形式で作成された請求書(=インボイス)を保存しないと、仕入税額控除が使えない」

という新しいルールです。

「難しそう…」と思うかもしれませんが、まずは最低限ここだけ理解しておけばOKです。

インボイス(適格請求書)って何?

請求書や領収書のうち、以下の項目が正しく書かれたものがインボイスにあたります。

  • 登録番号
  • 取引内容
  • 税率ごとの消費税額
  • 適用税率
    など

従来の請求書に比べて、「どの税率が適用されているか」を明確にする必要があります。

なぜそんな制度ができたの?

日本では現在、

  • 軽減税率(8%)
  • 標準税率(10%)

という 2つの税率 が存在します。
そのため、取引に応じて正しい税率で消費税を計算する必要が出てきました。

そこで国は、正しい税額を把握できるよう

インボイスの保存 → 仕入税額控除の要件化

という仕組みを導入したのです。

エージェント・企業側が気にする理由

仕入税額控除とは、事業者が消費税を納める際に、「受け取った消費税 − 支払った消費税」で差し引ける制度です。

しかしインボイスがないと、
「支払った消費税を証明できない」=「差し引けない」
という状態になってしまいます。



特に エージェント経由で働くエンジニア はここが重要で、
取引先がインボイスを求める理由はまさにここにあります。

インボイス制度でフリーランスエンジニアに起こること

インボイス制度が始まったことで、フリーランスエンジニアの働き方にも、少しずつ影響が出ています。
特にエージェント経由で案件に参画している方は、制度の影響を受けやすいため、この章で全体像をつかんでおきましょう。

ここでは、「登録しない場合」「登録する場合」 に分けて、それぞれどんな変化が起きるのかを解説します。

インボイス発行事業者に登録しない場合に起こること

「免税事業者のままがいいな…」と考えているフリーランスの方も多いですよね。
ただ、インボイス制度が導入された今、登録しないままでいると次のような影響が出る可能性があります。

まず、取引先(エージェント・企業)側の状況を見てみましょう

インボイスが発行されない場合、取引先は次のような不都合が生じます。

・あなたに支払った消費税分を “仕入税額控除” として扱えない
・結果として、消費税相当分をそのまま負担しなければならない
・つまり、インボイス非対応のエンジニアと取引すると損をしてしまう

たとえば、あなたに110万円(税込)を支払ったとします。
10万円分の消費税を支払っているはずですが、インボイスがなければその10万円を控除できず、取引先の実質負担が増えてしまうというイメージです。

その結果、フリーランスエンジニア側に起こり得ること

・契約更新の際に「消費税分を値下げしてほしい」と言われる
・インボイス対応しているエンジニアが優先される
・案件候補が減りやすくなる
・場合によっては契約終了の可能性もある

特に、
準委任契約やSES契約のようにエージェントを介して働く場合
インボイス対応していないと取引先が不利になるため、影響が表れやすい傾向があります。

一方で、影響が少ないケースもあります

以下のような働き方のエンジニアは、登録しない選択肢も現実的です。

・個人向けサービス(BtoC)が中心
・副業レベルで企業案件が少ない
・元々税込価格で提供しており、消費税を上乗せしていない

エンジニアといっても働き方はさまざまです。
まずは「自分の取引先は企業中心なのか、個人中心なのか」を確認するのが大切です。

インボイス発行事業者に登録した場合に起こること

次に、インボイス発行事業者として登録した場合の変化を確認していきましょう。

登録した場合、フリーランス側にはどんな変化がある?

・「課税事業者」になるため、消費税を納める必要が出てくる
・免税事業者だった人は、これまでの“消費税分の収入”が減る
・インボイス(適格請求書)を発行する業務が増える
・記帳や管理の負担が増える

特に免税事業者だった方は、収入減のインパクトを感じやすいかもしれません。

しかし、登録するメリットも確かにあります

・エージェント経由の案件を継続・新規問わず受けやすくなる
・「消費税分値引き」の交渉を回避できる
・契約更新で不利になりにくい
・取引先にとって扱いやすいパートナーになる

インボイス対応していることで、取引先側が「仕入税額控除」を使えるため、
あなたとの取引がこれまで通りスムーズに行えるようになります。

エンジニア特有の事情(ここがポイント)

フリーランスエンジニアの働き方は、次のような特徴が多いですよね。

・エージェントを介したBtoB取引
・長期の準委任契約/月額報酬制
・「企業 → エージェント → エンジニア」という流れが一般的

こうした取引形態では、
インボイスの有無が取引先のコストに直結しやすいため、登録の重要性がより高い職種 といえます。

フリーランスエンジニアは登録すべき?判断基準をケース別に解説

インボイス制度についての理解が深まったところで、次に気になるのは 「結局、自分は登録したほうがいいのか?」 という点ではないでしょうか。

ここでは、フリーランスエンジニアの働き方に合わせて、登録が“向いているケース”と“向いていないケース”をわかりやすく整理していきます。

インボイス制度の影響は、職種や契約形態によって大きく変わるため、
自分の働き方を照らし合わせながら読み進めてみてください。

登録した方がよいフリーランスエンジニアの特徴

以下のような働き方をしているエンジニアは、
インボイス発行事業者として登録した方がメリットが大きい と考えられます。

① エージェント経由で案件を受注している

エージェントや企業側は仕入税額控除の関係で、インボイスの有無をとても重要視します。
登録していないと、

・契約更新で不利
・単価交渉で“消費税分値引き”を求められる
・そもそも案件紹介の優先度が下がる

といったリスクが高まります。

② BtoB(企業向け)の取引が中心

法人クライアントはほぼ間違いなくインボイスを必要とします。
長期契約であればあるほど、登録しておいたほうが安定します。

③ 年間の売上が安定しており、長期的にフリーランスとして活動する予定

納税・記帳のコストは増えますが、取引の安定性 を優先したい方は登録のメリットが大きくなります。

④ 単価が高い案件を狙いたい・継続案件を増やしたい

インボイス対応しているエンジニアは、企業側から見ても「扱いやすい」存在です。
結果として、単価の高い案件や長期プロジェクトのチャンスが広がります。

登録しない選択肢が現実的なフリーランスエンジニアの特徴

一方、以下に当てはまるエンジニアは、登録しない選択肢も十分に考えられます。

① 個人向け(BtoC)のサービスが中心

例:プログラミング講師、個人開発ツールの提供、個人顧客向けの制作 など

個人顧客は仕入税額控除を使わないため、インボイスの有無は関係ありません。

② 副業レベルで収入が少ない

年間売上が少なく、税務的なコストを増やしたくない人は、登録しないメリットが勝る場合もあります。

③ クライアントが「税込固定報酬」で発注しており、消費税をそもそも請求していない

この場合、インボイスに影響されず働ける可能性があります。

判断のための3つの軸(最重要ポイント)

迷ったら、以下の3つを基準にすると判断がブレません。

判断軸

登録した方が良いケース

登録しない選択が現実的なケース

① 取引先(BtoB / BtoC)

BtoB取引が中心(企業・エージェントとの取引)

BtoC中心(個人向けサービス・講座など)

② 売上規模

年間売上が安定している / 将来もフリーランスとして継続予定

副業レベル / 売上1,000万円以下の免税事業者

③ 契約形態

エージェント経由の準委任契約が多い

直請け中心で顧客がインボイス不要と判断している場合

この3つの軸を整理すると、
「自分がどちらのケースなのか?」 が明確になります。

インボイス制度に登録する場合の準備と手続き

「インボイス発行事業者として登録した方が良さそうだ」と判断した方は、
制度の仕組みだけでなく “実際に何をすればいいのか” を知っておくことが大切です。

ここでは、登録までの流れ・必要な手続き・気をつけたいポイントをまとめて解説します。
フリーランスエンジニアでも無理なく進められるよう、できるだけシンプルに整理しました。

インボイス発行事業者の登録方法(最も簡単な実務ステップ)

インボイスの登録方法は大きく2種類あります。

書類を郵送する(紙申請)

最もオーソドックスな方法で、PC操作に不安がある人でも進めやすい。

手順:

  1. 国税庁サイトから「適格請求書発行事業者の登録申請書」をダウンロード
  2. 必要事項を記入
  3. 国税局の「インボイス登録センター」へ郵送
  4. 数週間後に「登録通知書」が届く

メリット: 書類ベースで進められる
デメリット: 登録完了まで時間がかかる(約1か月)

e-Taxを使ってオンライン申請(推奨)

こちらのほうが処理が早く、エンジニアには馴染みやすい方法。

必要なもの:
・マイナンバーカード(電子証明書)
・利用者識別番号(e-Taxログイン用)

利用できる3つのe-Tax形式:

種類

利用端末

特徴

e-Tax(Web版)

PC

ダウンロード不要・手軽

e-Tax(SP版)

スマホ/タブレット

アプリ不要。外出先でも申請できる

e-Tax(ソフト版)

PC

インストール必要。機能が豊富

メリット: 申請から登録までが速い(約2週間)
デメリット: 事前準備がやや煩雑

▶ 登録したら必ず「登録番号」を確認する

登録通知が届いたら、
・番号に間違いがないか
・有効期間の確認
・請求書フォーマットの更新

など実務の準備を整えることを忘れずに。

消費税の計算方法は“簡易課税”が現実的(エンジニアの場合)

インボイス制度に登録すると、同時に「課税事業者」として扱われます。
つまり 消費税を納める必要がある ため、計算方法の選択が重要です。

大きく分けて次の2つ。

簡易課税方式(エンジニアの主流)

みなし仕入率を利用して、納税額をシンプルに計算する方式。

フリーランスエンジニアは 第5種事業(みなし仕入率50%) に分類されるため、
計算式は次のようになります。

納付税額 =(売上 × 10%)−(売上 × 10% × 50%)

たとえば売上1000万円なら、
100万円 − 50万円 = 50万円が納税額。

実際の仕入れを細かく分類・記録しなくてもよいため、実務負担が少ない。

✔ 選択条件:2年前の売上が5,000万円以下
✔ 手続き:別途「簡易課税制度選択届出書」の提出が必要

原則課税方式(記帳が重い)

受け取った消費税から、実際の経費にかかった消費税を差し引く方式。

納付税額 =(売上 × 10%)−(課税仕入 × 10%)

領収書ごとに課税/非課税/軽減税率などを判断する必要があるため、手間が多く、個人には負担が大きい方式。

→ 会計知識に自信がない限り、簡易課税の方が現実的。

インボイス登録後に増える作業と、最小化する方法

インボイス対応すると、確かに事務作業は増えます。
しかし、工夫すれば実質的な負担を大きく減らすことができます。

● 増える作業

・インボイス対応の請求書を発行する
・取引ごとの記帳が複雑になる
・消費税の計算と申告が必要

● 負担を最小限にする方法

・会計ソフト(freee / マネーフォワード)で自動処理
・請求書テンプレートに登録番号を設定しておく
・税理士サービスを併用する

フリーランスエンジニアは本業の価値が高く、
会計作業に時間を取られるほど効率が悪くなるため、
会計ソフト+税理士サポートの組み合わせが最も合理的 です。

登録しない場合にできる対策

インボイス発行事業者に登録しないという選択肢は、決して“悪い選び方”ではありません。
特に免税事業者のフリーランスエンジニアにとっては、収入面で有利な場合もあります。

ただし、登録しない場合は 取引先との関係や今後の働き方をどう維持するか を考えておく必要があります。
ここでは、登録しない場合に実践できる現実的な対策をまとめました。

単価・契約条件の見直しを想定しておく

インボイス非対応のフリーランスは、取引先から次のような対応を求められることがあります。

・「消費税分の値下げをお願いしたい」
・「継続取引の条件を変更したい」
・「別のエンジニアに切り替える可能性がある」

取引先はインボイスがなければ仕入税額控除を受けられないため、
実質的な負担が増えてしまうからです。

▶ 対策

・報酬を税込固定価格で提示する
・契約前に「インボイス非登録であること」を明示し認識を合わせる
・普段から単価に見合う価値(技術力・対応力)を提供する

“値下げ回避” のためには、
「この人に依頼したい」と思われる存在になること がシンプルかつ強力な対策です。

スキル向上と案件選択で“選ばれるエンジニア”になる

登録しない最大の不安は、案件が減ったり、契約更新で不利になったりすることです。
ただしこれは、スキルや実績が強いエンジニアほど影響が小さくなる 傾向があります。

▶ 登録しなくても仕事が途切れない人の共通点

・技術力が高い
・コミュニケーション能力がある
・顧客満足度が高く評価されている
・エージェントやクライアントから「継続してほしい」と思われている

▶ 実践的な対策

・単価アップにつながる専門性を磨く(例:AWS、React、アーキテクチャ設計)
・稼働安定性の高い案件を複数持つ
・成果物のクオリティ・納期遵守などで信頼を積み重ねる

インボイス非対応であっても、
“替えが効かないエンジニア” であれば契約継続の可能性は十分に保てます。

請求先の方針を事前に確認しておく

実は、登録するかどうかの判断は
取引先がインボイスをどのように扱うか に大きく左右されます。

▶ 要チェック項目

・相手企業はインボイス必須か?
・今後も免税事業者との取引を続ける方針か?
・値下げ要求の可能性はあるか?
・インボイス登録しないことで不利になる場面はあるか?

企業によっては、免税事業者への配慮が手厚い場合もあります。
(例:免税のままでも報酬減額なしで契約継続)

最終的な判断は、「自分の収入 × 働き方 × 取引先の方針」の3つを総合して決めるのがベストです。

実務の負担を増やさない働き方を選ぶ

もし登録しない理由が「税務の負担を増やしたくない」という場合は、以下も有効です。

▶ 対策

・会計処理が少ない案件(準委任で固定報酬など)を選ぶ
・個人向けの開発支援・講座などBtoC案件を増やす
・副業としての範囲におさめる(年間売上1,000万円以下)

インボイスの影響が少ない働き方に寄せることで、
免税事業者としてのメリットを保ちながらフリーランスを続けることができます。

不安なときはプロに相談しよう

インボイス制度は、働き方や取引先によって影響が大きく変わるため、
「自分はどう判断すべきか?」が分かりにくい制度でもあります。

もし迷いがある場合は、一度プロに相談してみるのがおすすめです。



テックビズでは、
・インボイス登録の判断
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執筆者

キム ジンヨン

キム ジンヨン

韓国出身韓国生まれ。日本の大学を卒業し、ITエージェントに入社。 営業としてITエンジニアの転職支援を3年ほど経験し、ITフリーランスエージェントであるTEHCBIZにフリーランスとして参画。今はマーケティング部に所属し、TECHBIZメディアの管理及びライティングを担当。

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