・医療費控除はいくらから計上できるのか
・医療費だったら全て医療費控除の対象になるのか
・確定申告で医療費控除の計上を忘れたら再申請は無理なのか
確定申告のシーズンが迫ってきて、医療費控除について調査している方も多いかと思います。
しかし、全ての医療費が控除対象となるわけではないため、医療費を支払った全ての人がこの制度を利用できるわけではありません。
ルールを確認せずに確定申告で医療費控除を申請すると、ミスが生じ、余分な修正作業が必要になる可能性があります。
そこで、今回は「どの程度の医療費を支払えば医療費控除を申請できるのか?」や「医療費控除に含まれる費用」について解説します。
そもそも医療費控除とは?
医療費控除とは、所得控除の一部であり、年間で一定額以上の医療費を支払った人だけが受けられる制度です。
医療費控除額が増えると、所得税や住民税の課税対象額が減少し、節税効果が期待できます。
医療費控除の対象金額は総所得額によって異なる
医療費控除が適用される金額は、総所得額によって2パターンに分かれます。
どんなパターンがあるか見てみましょう。
1.世帯の年間医療費が10万円を超えた人
まず、「支払った年間医療費-保険料等で補填された金額」が、1世帯あたり10万円を超えている場合が対象となります。
年間で支払った医療費のうち、10万円を超える部分だけが医療費控除として計上可能です。
例えば、年間の医療費が30万円で、保険料からの補填が5万円あった場合、「30万円-5万円-10万円」の計算により、15万円だけが医療費控除として適用可能となります。
ただし、医療費控除として計上できる金額の上限は200万円までとなっています。
2.年間の総所得が200万円未満の人は、年間の医療費が総所得の5%を超えると対象
2つ目の条件は、「支払った年間医療費-保険料等で補填された金額」が、1世帯あたりの総所得の5%を超えている場合です。
このルールは、年間総所得が200万円未満の人に適用されます。
この条件に該当すれば、年間の医療費が10万円を超えていなくても、医療費控除として計上可能となります。
具体的な例を見てみましょう。
例えば、年間の総所得が150万円で、年間の医療費が8万円発生した場合、
150万円×5%=7万5,000円
8万円-7万5,000円=5,000円
となります。この場合、医療費控除として計上できる額は5,000円となります。
医療費控除の対象期間
医療費控除の対象となる期間は、1月1日から同年の12月31日までに発生した金額を基に計算されます。
具体的な例を挙げてみましょう。
例えば、2022年2月1日に5万円、2022年12月15日に3万円、2023年1月5日に4万円の医療費が発生した場合、
2023年の医療費控除は8万円(5万円+3万円)となり、
2023年の医療費控除は4万円となります。
このケースで2022年分の確定申告を行う場合、総所得金額が160万円以上の人は、医療費控除の計上額は0となります。
医療費控除の還付申告ができる期間
還付申告とは、所得控除などにより還付が発生する際に行う申告のことを指します。
医療費控除の還付申告が可能な期間は5年間となっています。
例えば、2022年分の医療費控除を計上していなかった人は、2023年1月1日から2028年12月31日までが還付申請期間となります。
ただし、還付申請が可能なのは、その年の確定申告を行っていない人だけです。そのため、主に会社員やパートタイムの方々が該当します。
すでに確定申告を終えた人が、追加で医療費控除を計上する場合は、「訂正申告」または「更生の請求」という手続きを行います。
訂正申告は確定申告期間内に修正を行うことを指し、更生の請求は確定申告期間外に修正を行う手続きを指します。
具体的な例を見てみましょう。
例えば、2022年分の医療費控除申請を確定申告を終えた後に行う場合、
2023年3月16日までに修正する場合は訂正申告、
2023年3月17日以降に修正する場合は更生の請求となります。
つまり、修正を行う日によって手続きの名称が変わります。
更生の請求が可能な期間は、元々の確定申告の締切日から5年間となっています。
したがって、2022年分の医療費控除の場合、「更生の請求」が可能な期間は2028年3月17日までとなります。
なお、更生の請求を行っても税務署から認められなかった場合は、申請は無効となり、還付金は振り込まれません。
医療費の中には医療費控除にならないものがある
医療費全てが、医療費控除の対象になるわけではありません。逆に、医療費以外の費用が、医療費控除の対象になる場合もあります。
ここでは、医療費控除に含められるものと含められないものを見てみましょう。
医療費控除に含めて良いもの
医療費控除の対象となる費用を5つご紹介します。
健康保険適用の受診料
風邪や怪我などでの治療費など、健康保険適用の受診料は基本的に医療費控除として計上可能です。例えば、健康保険適用前の医療費が1万円で、自己負担額が3,000円の場合、医療費控除の対象となる金額は3,000円となります。
治療による薬代
治療による薬代も医療費控除の対象となります。処方箋の薬だけでなく、ドラッグストアで販売されている一部の医薬品も対象となります。
入院中に病院で支給された食事代
入院中の病院食も医療費控除の対象となります。ただし、病院以外から提供される食事(コンビニで購入した食事や出前など)は、医療費控除の対象外となります。
医療用器具のレンタル代・購入費用
治療のために使用する医療用器具のレンタル代や購入費用も医療費控除の対象となります。ぎっくり腰の際のコルセットなども含まれます。購入場所は病院やドラッグストアなど問わず、対象となる製品であれば医療費控除の計上が認められます。
通院で発生した交通費
通院に伴う交通費も医療費控除の対象となります。病院へのバス代や電車代など、公共交通機関の利用料金が含まれます。ただし、タクシー代は公共交通機関を利用できない場合のみ対象となります。一方、自家用車で病院に通った際のガソリン代や駐車場代などは除外されます。
医療費控除に含められないもの
医療費控除に含められないものを3つご紹介します。
ビタミン剤やサプリメントの購入費用
ドラッグストアやコンビニエンスストアなどで販売されているサプリメントの購入費用は、医療費控除の対象外となります。これらは治療目的ではなく、病気の予防が目的であるため、医療費控除には含められません。また、一部の医療施設で行われている点滴によるビタミン剤の注入も原則として対象外です。
リラクゼーション目的のマッサージ代
体の疲れを取るためや癒しを求める「リラクゼーション目的」のマッサージ代も医療費控除の対象外となります。これは治療目的ではないため、医療費には含められません。ただし、捻挫やぎっくり腰などの病気を治療するためのマッサージであれば、医療費控除の対象となります。
人間ドックの費用
体の状態をチェックするための人間ドックの費用も、医療費控除の対象外となります。ただし、人間ドックをきっかけに重大な病気が発見され、その治療を行っている場合は、人間ドックの費用を医療費控除に含めることが可能です。
医療費控除を申請する手順
ここからは、確定申告で医療費控除を申請する手順を見てみましょう。
1.医療費対象となる領収書・レシートを集計し、年間の合計医療費を計算
医療費控除の対象になる領収書やレシートを集めて、支払った金額を集計してください。領収書やレシートを集める時は、支払った年が全て同じか確認しましょう。
2.年間の合計医療費が10万円(年間の総所得が200万円未満の人は、総所得の5%)を超えるか確認
集計した年間の合計医療費が、10万円or(総所得が200万円未満の人は)総所得の5%を超えているか、チェックしてください。当てはまらない人は、医療費控除の計上はできません。
3.一定額を超えた人は、医療費控除の明細書を作成
一定の金額を超えた場合は、医療費控除の明細書の作成をおすすめします。
医療費控除の明細書を作成する際には、以下の内容を記入します。
医療費通知に関する事項
医療費の通知(支払内容が記載されている)書類を添付する場合は、医療費通知に関する事項を記入します。会社員の場合は健康保険組合、個人事業主の場合は基本的に自治体から送付されます。紛失した場合は、発行元に再発行を依頼しましょう。
医療費の明細
「医療費通知に関する事項」に記載されていない医療費をここに記入します。記入する内容は以下の通りです。
医療を受けた方の氏名
支払先の病院や薬局などの名称
医療費の区分
支払った医療費の額
上記のうち、生命保険や社会保険などで補填される金額出典:国税庁
領収書ごとではなく、医療機関ごとに記入します(医療を受けた人が同じ場合)。
控除額の計算
医療費控除の金額を、確定申告書の「医療費控除」の欄に記入しましょう。
4.医療費控除の明細書の内容を見ながら確定申告書に記入
医療費控除の金額を、確定申告書の「医療費控除」の欄に記入しましょう。
5.確定申告書と医療費控除の明細書を一緒に提出
確定申告書の作成が一通り終わったら、医療費控除の明細書と一緒に提出しましょう。「還付される税金」の欄に金額が記載されていれば、その金額が還付されます。
逆に、「納める税金」の欄に金額が記載されている場合は、その金額の所得税を支払う必要があります。
また、集計に使用した領収書やレシートは5年間保管する義務があります。保管していないことが発覚した場合、医療費控除が取り消される可能性があるため、十分注意してください。
医療費控除が使えなくても「セルフメディケーション税制」を使える可能性がある
医療費控除に当てはまっていなくても、「セルフメディケーション税制」を計上できる可能性があります。セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例制度です。薬局やドラッグストアなどで、病気を予防するために購入した対象商品の金額が、年間1万2,000円を超えた人に適用されます。
たとえば、対象製品の購入金額が年間で7万円だった時は「7万円-1万2,000円」となるため、セルフメディケーション税制として5万8,000円計上可能です。ちなみに年間で「8万8,000円」まで認められています。
セルフメディケーション税制の計上額も、確定申告書の「医療費控除」の欄に記入します。
セルフメディケーション税制で対象となる製品
対象となる商品は、鎮痛剤や風邪薬、軟膏など、さまざまな製品が含まれます。しかし、製品によってはセルフメディケーション税制の対象にならないものもあります。
製品を購入する際に確認すべきは、製品のパッケージです。一部の対象製品には、セルフメディケーション税制のマークが表示されています。セルフメディケーション税制の対象製品かどうか不安な場合は、このマークを目印にして商品を選ぶと良いでしょう。
医療費控除とセルフメディケーション税制に関する注意点
医療費控除とセルフメディケーションは、同じに見えて実は違う箇所があります。
最後に、2つの違いを4つに分けて解説します。
医療費控除とセルフメディケーション税制は対象となる費用が異なる
対象となる費用の種類は異なります。
医療費控除では、医療施設での受診費用や入院時の食事代など、対象となる費用の範囲は広いです。
一方で、セルフメディケーション税制は、ドラッグストアなどで販売されている健康の増進や予防を目的とする一部の医薬品のみが対象となります。
つまり、「医療費控除の対象額が多い=セルフメディケーション税制が適用される」とは限らないのです。極端な例を挙げると、医療費控除の対象額が10万円近くでも、セルフメディケーション税制の対象額が0円の場合もあります。
医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できない
医療費控除とセルフメディケーション税制の併用は認められていません。例えば、医療費控除の対象額が15万円、セルフメディケーション税制の対象額が5万円で、両方とも条件を満たしていても、一方しか利用することができません。この点を覚えておきましょう。
セルフメディケーション税制は期間限定の制度
医療費控除は長い間存在する制度ですが、一方でセルフメディケーション税制は数年前に導入された期間限定の制度です。この制度の対象期間は、2023年12月31日までと定められています。したがって、医薬品をまとめて購入する際には、セルフメディケーション税制の有効期間を考慮しながら行うと良いでしょう。
使用する明細書が違う
医療費控除を計上する際には「医療費控除の明細書」に記入します。一方、セルフメディケーション税制を利用する場合には、「セルフメディケーション税制の明細書」に記入する必要があります。セルフメディケーション税制の明細書には以下の内容を記入します。
申告者の健康の保持増進及び疾病の予防への取り組み
病気の予防や健康的な体を維持するために行った取り組みを「取り組み内容」から選びます。該当する項目がない場合は、( )の中に記入しチェックマークを入れます。ただし、ここで発生した費用は医療費控除の対象にはならないので注意が必要です。
特定一般用医薬品等の購入費の明細
以下の4つの内容を記入します。
- 支払先の薬局などの名称
- 医薬品の名称
- 支払った金額
- 上記のうち、生命保険や社会保険などで補填される金額
購入先の薬局やドラッグストアごとにまとめて記入します。
控除額の計算
上記2つの項目を基に、セルフメディケーション税制として計上できる金額を計算します。なお、医療費控除と同様に、領収書やレシートを5年間保管する義務があるので覚えておきましょう。
まとめ
確定申告で計上する医療費控除を中心に解説しました。まとめると、こちらです。
✓医療費控除の対象になる人
①1世帯の年間医療費が10万円を超えた人
②年間の総所得が200万円未満の人は、1世帯の年間医療費が総所得の5%以上
✓医療費控除の対象になる項目
①健康保険適用の受診料
②治療による薬代
③入院中に病院で支給された食事代
④医療用器具のレンタル代・購入費用
⑤通院によって発生した交通費
✓医療費控除を申請する流れ
①対象となる領収書・レシートを集計し、年間の合計医療費を計算
②年間の合計医療費が10万円(年間の総所得が200万円未満の人は、総所得の5%)を超えるか確認
③一定額を超えた人は、医療費控除の明細書を作成
④医療費控除の明細書の内容を見ながら確定申告書に記入
⑤確定申告書と医療費控除の明細書を一緒に提出
確定申告で医療費控除を活用して節税ができれば、手元に残るキャッシュの金額を増やせます。医療機関や薬局へ行く機会が多い人は、医療費控除の対象にならないか確かめることを、おすすめします。
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