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新年の目標が続かないフリーランスへ──AI時代に見直したい“目標の立て方”

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年末が近づくと、多くのフリーランスが「新年の目標」を考え始めます。
仕事の成果、勉強したい分野、健康のための習慣づくり。時間の使い方を見直し、理想の一年を思い描きながら、新年の抱負を書き出す人も多いでしょう。

ところが、その新年の目標が、年明けから数週間で曖昧になってしまうことは珍しくありません。忙しさに追われ、「達成できていない」と感じたまま、振り返ることすらなくなる。これは意志が弱いからではなく、フリーランス特有の構造的な問題だと言えます。

本当に問い直すべきなのは、「どんな目標を立てるか」ではなく、「その目標は、何を土台に作られているか」です。

フリーランスの新年の目標が形骸化する構造的な理由

一般的に、よい目標の条件として「具体的であること」「期限があること」「達成できたかどうかが分かること」が挙げられます。こうした考え方は、目標達成を評価する場面では今も有効です。実際、会社員の仕事では、数値や期限を伴う目標が当たり前のように使われています。

しかしフリーランスの場合、事情は少し違います。
会社員には、会社の方針や理念、つまりMVV(Mission・Vision・Value)が存在し、その上に個人の目標があります。一方でフリーランスは、その土台がありません。それにもかかわらず、年収や案件数といった「結果だけの目標」をいきなり立ててしまいがちです。

その結果、仕事の内容や環境が変わった瞬間に、目標が現実と噛み合わなくなります。「この目標、今の自分に合っているのだろうか」と感じ始めた時点で、新年の目標は達成を目指すものではなく、放置される存在になってしまいます。

フリーランスの新年の目標が形骸化しやすいのは、目標そのものが悪いからではありません。 その上位にあるべき「どんな仕事をしたいのか」「どんな判断を大切にしたいのか」という軸が、言葉になっていないことが、最大の原因なのです。

フリーランスに必要なのは「立派なMVV」ではない

フリーランスにMVVが必要だと聞くと、「そこまで大げさなものは考えられない」と感じる人も多いかもしれません。企業のMVVは、社会的な使命や将来像を掲げ、多くの人に共有される前提で作られています。その完成度や一貫性を、個人にそのまま求めるのは現実的ではありません。

ただし、フリーランスにMVVが不要というわけでもありません。
必要なのは、企業のように完成されたMVVではなく、「判断に使える粒度」の個人MVVです。

フリーランスの仕事は、選択の連続です。どんな仕事を引き受けるか、どこに時間を使うか、何を勉強するか。こうした判断を迫られたとき、数値目標だけでは決めきれない場面が必ず出てきます。だからこそ、「なぜこの働き方を選んでいるのか」「どんな状態なら納得できるのか」「仕事を選ぶとき、何を優先したいのか」といった軸が必要になります。

この軸こそが、フリーランスにとってのMVVです。 Missionは「なぜ今の仕事をしているのか」を一言で表したもの、Visionは「数年後、どんな状態なら理想に近いか」を示すもの、Valueは「仕事や行動を選ぶときの判断基準」です。どれも1〜2行、あるいは箇条書きで十分。立派である必要も、誰かに説明できる必要もありません。

重要なのは、迷ったときに立ち戻れるかどうかです。この個人MVVがあることで、新年の目標は単なる抱負ではなく、「自分はどう行動するか」を考えるための道具になります。フリーランスにとってMVVとは、目標を縛るためのものではなく、目標を現実につなげるための土台なのです。

AIは「個人のMVV」を一緒に考える相棒になる

とはいえ、個人のMVVを一人で考えるのは簡単ではありません。抽象的になりすぎたり、逆に目標の焼き直しになってしまったりする。フリーランスがMVVを持てない理由の多くは、考え方ではなく「整理の仕方」にあります。

ここで役に立つのがAIです。ただし、AIにいきなり「私のMVVを作ってください」と聞くのはおすすめできません。AIはあなたの仕事も、価値観も知りません。重要なのは、AIを“答えを出す存在”ではなく、“質問を投げる存在”として使うことです。

たとえば、新年を前にこんな形でAIに話しかけてみてください。
「これから、私がこの一年で取り組んだ仕事について共有します。あなたは質問を重ねながら、私の仕事観や判断基準を整理してください。」
こう伝えたうえで、仕事の内容や印象に残っている出来事を順に共有していきます。

するとAIは、「その仕事を続けたいと思った理由は何ですか」「逆に、違和感を覚えたのはどんな点でしたか」といった質問を返してくれるでしょう。答えながら振り返るうちに、自分が何を大切にして仕事を選んできたのかが、少しずつ言葉になります。

十分に対話したあとで、AIにこう頼みます。
「ここまでのやり取りをもとに、私のMission・Vision・Valueを“整理してください。」
完成度は気にしなくて構いません。むしろ、未完成であることが重要です。

このようにして作った個人のMVVは、新年の目標を立てる際の判断軸になります。環境が変わったら、またAIと対話して書き換えればいい。AIを使うことで、MVVは一度作って終わりのものではなく、仕事と一緒に更新され続けていくでしょう。

企業だってMVVは一度作って終わりではありません。定期的に見直したり、より細かく言語化したりブラッシュアップが必要です。それらを一人で行うのは難しいですが、ぜひAIをパートナーにしながら、自分のMVVをクリアにし、そこから2026年の目標を考えてはいかがでしょうか。

自分の軸を人と一緒に整理したい人は、テックビズに相談を

AIを使えば、自分の考えや価値観を言葉にする手助けはできます。一方で、「その言葉をどう仕事や選択につなげるか」「現実的にどんな道がありそうか」といった部分は、人と話すからこそ見えてくることもあります。

テックビズでは、フリーランスのキャリア相談にも力を入れており、自分では気づきにくい強みや、これからの働き方の方向性を一緒に整理できます。AIで考えを深めつつ、最終的な判断や壁打ちは人と行う。そんな使い分けも、今の時代らしい選択肢かもしれません。

【編集後記】変化の激しい時代だからこそ、碇としてのMVVを

最近、とある企業の採用コンテンツを制作する仕事に関わっています。数か月にわたり、何十人もの社員にインタビューを重ねる中で、強く印象に残ったことがありました。その企業ではMVVが徹底して浸透しており、誰に話を聞いても、会社のミッションに共感したエピソードが自然と出てくるのです。

興味深かったのは、そこで働く人たちの価値観が、市場の変化によってほとんど揺らいでいないことでした。その企業は成長市場のトップカンパニーであり、競争環境は年々激しくなっています。それでも、将来への焦りや迷いを語る人はほとんどいません。MVVが共有されているからこそ、「いま何をやるべきか」が明確で、それを淡々と、真摯に実行しているように感じました。

一方で、生成AIをはじめとした技術の進化は凄まじく、新しい技術が生まれるたびに、新しい稼ぎ方や効率的な働き方が次々に登場します。フリーランスで働いていると、そうした言葉に惹かれてしまうのも無理はありません。

もちろん、新しい技術に目を向けること自体は大切です。ただ、それを自分の人生や仕事にどう取り入れるかを判断するには、やはり軸が必要になります。変化の激しい今の時代だからこそ、自分なりのMVVを持つことが、遠回りに見えて、実は最も確かな選択なのではないでしょうか。

執筆者

鈴木光平

鈴木光平

10年にわたって、フリーライターとして活動。テックビズのライターとしても活動中。主にスタートアップ界隈を中心に起業家や投資家などを取材、記事の執筆などを行ってきました。貴重な話を聞いてきた経験から、少しでも役に立つ情報をお届けします。

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