データサイエンティストと言うと、データを分析し、その結果をもとに、事業展開を考えていくといったことを思いつく人も多いのではないでしょうか。そんなデータサイエンティストが生き残るためには、更なるキャリアアップが必要になります。現代においては、データ管理だけでなく、情報処理やマーケティングといったビジネススキルまでも学ぶ必要が出てきています。
では、データサイエンティストの将来性は一体いかがなのでしょうか。この記事では、データサイエンスについて学び始めたばかりの人や、既にデータサイエンティストとして活動している人までを対象にデータサイエンティストを取り巻く環境を分析しつつ解説していきます。また、長く活躍するために役立つスキル、年収レンジなども紹介します。
1. データサイエンティストの将来性は高い
情報技術が発達した現代では、企業に大量のデータが蓄積されています。ICT産業に限らず、自動車、健康医療、インフラなど、あらゆる産業においてビッグデータの実用化が始まっています。データサイエンティスト協会とIPA(情報処理推進機構)が共同で発表した資料では、この 10 年ほどの間にデータサイエンスによるデータ活用の手法や成果は飛躍的に発展し、多くのデータサイエンティストが活躍するようになったと明言しています。
データサイエンティストは幅広い年齢層に支持されている将来性の高い仕事であり、データサイエンティスト協会が2021年に発表した調査結果では、8割以上が将来性を感じているという回答をしています。これほどまでに将来性が高い理由はいくつか考えられます。
AIを使いこなす人材として期待されている
AIを活用できる人材は、今後官民問わず需要が高まると考えられます。これは、内閣府が公表した資料の内容からも明らかです。内閣府では、AIとデータサイエンスに対する知見を持つエキスパートの教育体制を構築し、産業全体の活性化につなげる考えを示しています。データサイエンティストの仕事には、AIを駆使したデータ分析手法の把握も含まれることから、今後一層の重要さを増していくでしょう。
ビックデータ収集、分析、解析、可視化するという役割を持つデータサイエンティストは、AI開発の中でも重要な役割を担っており、世界的にもランキング上位に挙げられているほど、注目されている職業でもあります。
ビッグデータ市場の拡大に伴い需要が高まる
企業は顧客情報を管理していくことによって、市場需要を探ることに必死になっています。現代においてはビックデータの確保による競争が起きているということも考えると、その点でもデータサイエンティストの役割は大きなものになっていくでしょう。
人工知能の代表的な活用事例として挙げられるのが、自動運転や遠隔医療です。たとえば自動運転の場合、走行中の映像データやセンシングデータなどを分析しながら自動車のハンドリング、ブレーキ操作、アクセルの制御などを行います。また、遠隔医療においては、X線画像やバイタルデータ、患者が訴えている症状の特徴などから考えられる病気を判定します。
このように、人工知能の技術を活かしてさまざまな課題を解決する場合、学習データとなる膨大なデータが必要になります。これこそがビッグデータであり、今後イノベーションの革新とともにビッグデータ市場はますます大きくなっていくと考えられます。
これまでITエンジニアといえば、一定の法則にしたがって動作するプログラムを構築するプログラマーやSEが主流でした。しかし、AIが普及していく過程においては単なるコーディングだけではなく、ビッグデータを正確に扱える高度なスキルをもった人材が不可欠となります。これこそがデータサイエンティストであり、ITエンジニアと並んで極めて高いニーズが予想されているのです。
経験豊富なデータサイエンティストが少なく獲得競争が過熱
実用性のある経験と知識や技術、マインドなどを身につけている人材は、市場の中でもかなり少なく、希少価値を高めています。それに伴い獲得競争も過熱化しています。
ビッグデータや人工知能が注目される以前からデータサイエンティストという職種が存在していましたが、ごく限られた分野でしか需要がありませんでした。見方を変えれば、これまで豊富な経験をもったデータサイエンティストは極めて少ないことを意味します。
しかし近年、IT関連の分野だけではなく、製造や医療、物流をはじめとした幅広い分野において、データサイエンティストの知見が求められるようになっています。当然のことながら、すでに豊富な経験やスキルをもったデータサイエンティストの市場価値は極めて高く、多くの企業からの引き合いによって獲得競争が過熱しているのです。
経済産業省が公表している資料では、ビッグデータやAI、IoTを「今後大幅に市場が拡大する見方が強い」と結論付けています。また、これら先端IT技術を扱う人材は、2020年までに4.8万人が不足するとされています。
高等教育機関が増加している
データサイエンティストの需要増を受け、日本国内でもデータサイエンス学部、学科、研究コースなどの創設が相次いでいます。たとえば国公立大学では、滋賀大学が「データサイエンス学部」を開設し、さらに2019年4月に国内最初の「データサイエンス研究科」を開設しました。
また、独立された学部・研究科としてではなく、東京大学では学部・学科横断型プログラムとして、「数理・データサイエンス教育プログラム」が開設されました。
企業内においても独自に教育機関を導入する機会が増えているというのは、海外だけではなく日本でも同じことが言えます。それだけデータを管理するスキルの重要性について考える人が増えているということでもあるでしょう。
2013年には日本でデータサイエンティスト協会が発足
2013年5月、ビッグデータをビジネスに活用するための優秀な人材を育成するために、データサイエンティスト協会が設立されました。
そもそもこれまでは、データサイエンティストという定義が曖昧で、企業によっても求めるスキルや技術レベルが異なっていました。また、データサイエンティストを目指す個人も、定義が曖昧であるがゆえに何を目指せば良いのか、自分自身の現状のレベルがどの程度に位置しているのかが分からないケースが多かったのです。
そこで、データサイエンティストという人材の定義や評価の基準を定めるとともに、さまざまなシンポジウムで情報交換を行い、データサイエンティストの専門家同士のコミュニティを形成する目的も含めて協会が発足しました。これにより、データサイエンティストを目指す個人に対してはキャリア形成支援を行ったり、データサイエンティストを求める企業と個人とのマッチング支援などの取り組みも提供できるようになりました。
データサイエンティスト協会では、個人もしくは法人による会員を募集していて、データサイエンティストに関する最新の情報、現場での導入事例といったことをコミュニティーを通じて学ぶための、人材育成の場が提供されています。
米国では人気職種としての地位を既に確立
大手求人情報検索サイト「Glassdoor」によると、米国では2022年現時点で人気の職種として、ランキング3位に入るほどの人気があります。というのも時代背景というものも関係しているとはいえ、最新のテクノロジーの開発には必要不可欠な人材であるということを踏まえると、今後も人気が衰えることはないと考えることができます。
参考:データアナリストの将来性
データアナリストの将来性は非常に高いと考えられていますが、BIツールなどが導入される機会も増え、すでにデータ分析、解析などに関しては自動化が進められているということを考えると、「専門性を追求する」「コンサルなど他分野のスキルを掛け合わせる」といった進展もデータアナリストには求められています。
将来はなくなる?データサイエンティストの将来性を懸念する声
現在非常に人気のあるデータサイエンティストですが、その裏では将来性を不安視する声も潜んでいるようです。どのような理由からデータサイエンティストの将来性が懸念されているのか、今回は4つのポイントを中心に解説します。
経済減速によるR&D投資の減少
R&D投資とは、事業拡大のために技術開発や研究に関しての投資を行うことで、イノベーティブな活動を進めていくために必要なものと考えられていますが、経済減速によって、その減少が著しく加速してしまった場合、データサイエンティストの市場需要は高まっているとしても人材を確保するだけの資金が作れない、もしくは年収が落ちてしまうということにもつながることが考えられます。
IT分野に限らず、製造業をはじめとする各業界において、これまでは自社の事業領域に関連する科学分野の研究や新技術の開発、既存技術の改良を図る「R&D」の取り組みが積極的に行われてきました。しかし、2019年からはじまった世界的な景気後退と合わせて、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大による影響を受け、今まで盛んだったR&D投資(研究開発費用)が今後減少していくのではないかと危惧されています。
自動化の台頭
データサイエンティストの仕事の中で大きな比重を占めているのが学習データの準備とモデル構築ですが、これらの作業はやがて人工知能に置き換えられるのではないかと懸念する声があります。実際、すでにモデル構築の部分は自動化が進んでおり、学習データの準備においてもIoTのセンシングデバイスなどの台頭により自動化が実現しつつあります。
人工知能やビッグデータが普及すればするほど、データサイエンティストがこれまで培ってきたノウハウや知恵がAPIなどに集約され、高度な専門職ではなくとも一般的なエンジニアにも扱えるようになると考えられているのです。
すでにデータ分析や解析、可視化などについてはBIツールを導入したり、クラウド技術が世界的にも向上し続けていくことを考えると、企業は人材を増やすことなく、新技術を導入することで、データ管理を向上させることが可能になっています。つまり、データアナリストは生涯活動を続けるためには、本来の役割の範囲を超えて、他分野でのキャリアアップを図る必要性も出てきているようです。
人員余剰による飽和
R&D投資の減少、そして自動化が加速するとなると、人員余剰による飽和が起きてしまってもおかしくはありません。そうなると、市場ではデータアナリストによる競合性が高まり、仕事を得にくい状況が生まれることも予想されているのです。
データサイエンティストは海外を中心に魅力的な職種として注目され、多くの人が目指す専門職となっています。しかし、将来的には自動化の台頭によってデータサイエンティストの人員が過剰になってしまうことも懸念され、企業のR&D投資が抑制された場合はその可能性がさらに高まってくることでしょう。
しかし、識別や予測などの領域はAIに代替される可能性があるとしても、どのデータを使って社会にどのような価値を生み出すか、その仕組みをデザインするのが、人間にしかできない仕事です。したがって、単に数学的・統計学的に強いデータの専門家ではなく、自身の知見を実際にビジネスに運用できる能力や感度が備わったマルチスキル人材が求められるようになっていくでしょう。
現在の業務への不満
現役データアナリストが組織の一員として働く中で、現状の業務への不満を漏らし出すということもあるようです。「身につけているスキルを活用する場がない」、「周囲のデータ管理に関する基本知識が欠けつしている」という業務の現場から不満を抱く人もいるようです。
5. データサイエンティストとして長く活躍するために必要なスキル
データサイエンティストとして継続して活躍し続けるためには、データ管理に関するスキル以外に、その他スキルを掛け合わせることが重要であると考えられています。ここではデータサイエンティスト協会が定めた『データサイエンティストスキルチェックリスト』を参考に、どのようなスキルが他に求められているのかを考えていきます。
ビジネス力
プログラマーやエンジニアなどがコミュニケーション能力やビジネスに関する知識などが求められるのと同様に、データサイエンティストもビジネス力が求められる時代になりました。
AIで何かを解決したいと考えるクライアントの多くは、具体的にどのようなシステムを開発すれば良いのか分からないからこそ開発会社に相談にやって来ます。データサイエンティストはプログラマーのようにパソコンに向かってコーディングをするのではなく、SEやPMといった上位レイヤーの担当者と同席し、クライアントとコミュニケーションをするところから始まります。
集められたビッグデータをもとにして、企業のマーケティングをサポートしたり、効率の良い社内のシステム構築をサポートするといったことが今度は強く求められるようになるでしょう。
データサイエンス力
データ分析に関する数学や統計学に長けていることは、データサイエンティストにとっては望ましいことであり、最低限求められている重要な項目になっています。市場価値を高められる所以も、このデータサイエンス力と、次のデータエンジニア力が合わさっているために高い価値を保つことができるのです。
たとえばAIを店舗のマーケティングに活かしたいと考えているクライアントがいる場合は、どのようなデータを収集し統計をとれば正確な結果が導き出せるのかを判断しなければなりません。当然のことながら、求める結果や統計の種類によっても収集すべきデータは変わってくるでしょう。
クライアントの意図や目的を正確に理解した後は、その課題を解決するために統計学や情報処理に関する高度な知見が求められるのです。
データエンジニアリング力
データ管理のための基盤構成に関する知識、もしくは技術なども重要なスキルに値します。収集すべきデータや統計の方法が決まったら、それをどのように処理して課題解決に活かすのかを検討しなければなりません。解析に使用するツールの選定や分析方法、さらにはPythonなどのプログラミング言語を扱うスキルも求められます。
このように、統計データをクライアントが理解または運用しやすいように形として使える状態にする力がデータエンジニアリング力にあたります。
データサイエンティストにとって、ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニアリング力はどれが欠けても成立しません。従来のITエンジニアよりも幅広い理数系の知識が求められるからこそ、優秀なデータサイエンティストは希少価値の高い人材といえるのです。
エンジニアの役目というのはデータ分析のためのプログラムを設定するというだけでなく、それに携わる人員のマネジメントも含まれているため、コミュニケーションの力が求められることもあります。
すべてが「棟梁」レベル以上にあることが望ましい
世間一般的にはビジネス力、データサイエンス力、データエンジニア力、この3つの能力が棟梁レベルであることを求められています。(見習いレベル→独り立ちレベル→棟梁レベル→世界を代表するレベルの順に高いスキルを示すものとする)
このレベルに達していることで実用性の高い人材であるということを認識してもらえるようになります。
「データサイエンスは使えない/いらない」と言われない努力も必要
すでにデータサイエンス部門での市場は飽和状態にあると考えると、どれだけスキルを高く維持できていたとしても、代わりがいるのであれば使えない、いらないと考えられてしまえば、簡単にクビを切られてもおかしくはありません。そんな目に遭わないようにするためにも今後生き残るためのポイントを考えていく必要があります。
6. データサイエンティストとして今後生き残るためのポイント
優秀なデータサイエンティストとして長く生き残っていくためには常に勉強し続け、さまざまな最新のテクノロジーや知識に触れていく姿勢が求められます。
データサイエンティストとして今後生き残るためには、普段から求められている仕事以外の活動も増やしていく必要があるでしょう。ここで重要なのは、知識をインプットとして吸収したら、現場や情報発信の場でアウトプットとして活かすことです。
市場価値は継続して高い位置を保てることが期待される職業です。積極的に行動を起こし、個人としての価値も高めていきましょう。
能動的にインプットを行う
誰かに言われて行う行動を受動的であると考えるのと対照に、自発的に行動を起こすことを能動的と言います。データサイエンティストとして生き残り続けるためには、新しい情報や活用事例などを頻繁にインプットすることは将来的にも役立つでしょう。誰に言われるのでもなく、能動的に行動し続けることによって、リーダーシップを発揮しうる力を身につけることにもつながります。
インプットとはその名の通り、自分自身の中に知識として吸収することを言います。インプットの量が自分自身の知識のベースを形成するため、インプットをやめてしまうとその時点で知識のアップデートが止まってしまいます。
日進月歩のIT業界においては、インプットを止めてしまうことは自分自身の成長をストップさせることも意味します。「この資格を取ったからアウトプットは必要ない」「データサイエンティストとして就職したから勉強しなくても良い」と考えるのは危険で、常に最新の技術動向や知見を吸収しておかなければなりません。
積極的にアウトプットを行う
インプットされた情報は、頭の中にしまっておくだけでは、すぐに記憶から消されてしまいます。それをとどめるためには、積極的にインプットした情報をアウトプットし続けることも重要です。学んだことがすべて仕事の役に立つとは限りませんが、少なくとも他のデータサイエンティストに情報共有をして役立てることは可能です。
また、インプットをした後で、実際に自分の手を動かしてアウトプットすることによって初めて知識として定着させられる効果もあります。インプットとアウトプットはどちらが重要というものではなく、あくまでも両者が一体となって重要な役割を果たすことを覚えておきましょう。
9. まとめ
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