フリーランスの医療保険事情とは?制度・種類を解説!

・フリーランスの医療保険ってあるの?
・医療保険の制度が分からない…
・医療保険の金額はいくらかかるの?

フリーランスへ転身したい人の中には、医療保険の支払額や制度が分からずに、不安な人もいるでしょう。自分で調べたものの、ルールを理解できなかった人もいると思います。

そこで今回は、医療保険の概要を解説しながら、医療保険の特徴や種類を見てみましょう。計算式や支払相場も載っていますので、参考にしてみてください。

医療保険の概要

医療保険とは、診察費や手術費などが発生した時に、負担額が軽くなったり見舞金が支給されたりする保険のことです。

医療保険は大きく分けて、2通りに分かれます。1つは公的の医療保険で「国民健康保険」と呼ばれています。国民健康保険に加入すると、保険適用の診察・手術であれば3割負担です。

しかも、1カ月間(毎月1日~末日)の医療費が高額だった場合は「高額療養費制度」の利用もできます。高額療養費制度とは、指定された金額の上限を超える医療費が発生した時に、医療費の一部が返ってくる制度のことです(上限は収入によって異なります)。

もう1つは、民間の保険会社が販売している保険で、一般的には「生命保険」と呼ばれます。カスタマイズできるため、自分好みの保険を見つけたい人に、おすすめです。

2種類とも医療保険ではありますが、しかし加入条件や加入義務は異なります。今回は、その違いを比べながら読んでいただけると幸いです。

フリーランスは全員、公的医療保険に加入しなければならない

全てのフリーランスは、公的医療保険に加入しなければならない決まりになっています。収入に関係なく、全員強制加入です。会社員からフリーランスに転身した時は、原則、組合の健康保険を脱退して国民健康保険へ切り替える手続きが発生します。よって、住んでいる場所の自治体で切り替えの手続きを行わなければなりません。

なお、組合の健康保険から国民健康保険へ切り替える手順は、こちらの通りです。

1.役所で必要書類の記入をする。
2.保険年金課へ行く(市民課など別の名称の場合もアリ)。
3.身分証明書(免許証など)と健康保険を脱退したことが分かる書類(例.資格喪失証明書など)を必要書類と一緒に提示する
4.国民健康保険の健康保険証が発行される

このような流れで、国民健康保険へ加入します。
しかし、国民健康保険以外にも選択肢はあります。詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

関連記事:【フリーランスになる前に知っておきたい】独立後の健康保険について

公的医療保険の計算方法を見てみよう

公的医療保険では、医療分・支援金分・介護分の3種類の税額を合計した金額で税金が決まります。3種類の税額は、いずれも「所得割・均等割・平等割」を足した金額です。

つまり、公的医療保険料を計算式に示すと、このような形になります。

(医療分の所得割+均等割+平等割)+(支援金分の所得割+均等割+平等割)+(介護分の所得割+均等割+平等割)=年間の公的医療保険料

なお、所得割と均等割の平等割の計算方法は、それぞれ異なります。

ここでは、この3種類の計算方法を見てみましょう。

所得割

所得が高い人ほど、税額が上がる制度のことです。
計算式は、こちらです。

(前年の所得金額-基礎控除額)×税率

基礎控除額は年度、税率は保険の種類や自治体で変わります。
金額を当てはめて、例を見てみましょう。

例 前年の所得金額が200万円、基礎控除額が33万円、税率が医療分9.5%、支援金分が3.0%、介護分が2.5%だった時の所得割額
(200万円-33万円)×(9.5%+3.0%+2.5%)

よって25万500円が、年間の所得割額です。

均等割

均等割では、被保険者1人あたりに決まった金額が賦課される制度です。1世帯あたりの加入者が多くなるにつれて、税額が増えます。

計算式は、下記の通り。

被保険者の人数×金額

金額は、保険の種類で変わります。
こちらも例を見てみましょう。

例 加入者2人。1人あたりの金額が医療分2万5,000円、支援金分8,000円、介護分7,000円だった時の均等割額
2人×(2万5,000円+8,000円+7,000円)

よって7万6,000円が、1年間の均等割負担額です。

平等割

平等割は、1世帯につき決まった金額が賦課される制度です。
計算式は、下記の通りです。

世帯数×金額

こちらも、金額は保険の種類で変わります。
例を見てみましょう。

例 国民健康保険対象者は1世帯。1世帯あたりの金額が医療分2万4,000円、支援金分6,000円、介護分7,000円だった時の平等割額
1世帯×(2万4,000円+6,000円+7,000円)

つまり3万7,000円が、年間の平等割です。

今回の例を当てはめると「25万500円+7万6,000円+3万7,000円」ですので、年間の保険料は36万3,500円となります。(参考:岡山市)

医療費控除についてはこちらで詳しく解説しています。

関連記事:医療費控除の申請方法を紹介!いくらから計上できるの?

公的医療保険で賄えない時は、民間の医療保険に加入するのも手

公的医療保険だけでは不安な時は、民間の保険会社が取り扱っている医療保険に加入するのも手です。加入義務はありませんが、国民の多くが民間の医療保険に加入しています。しかし民間の医療保険は、種類が多いため、どの保険に加入するか迷う人がいるのも事実です。

そこで、ここでは3つの視点に絞って、保険の種類を紹介します。

補償期間

終身医療保険と定期医療保険の2種類があります。

終身医療保険とは、加入開始~解約まで同じ保険料を払い続ける保険のことです。契約は一生涯できるため、保障の内容も変わりません。

一方、定期医療保険とは期間限定の保険です。加入期間が短い分、同じ保障内容の終身医療保険に加入する場合と比べると、月々の保険料は安いです。しかし、満期を迎えた後に再度、保障内容が同じ保険に加入する場合、更新(再加入)しなければいけません。つまり、満期を迎えるたびに保険料が計算し直されるということです。

一般的に、高齢の人ほど保険料は上がります。同じ契約内容の保険に数十年間加入する場合は、終身医療保険の方が安くなる可能性が高いため、覚えておきましょう。

保険料の積立有無

貯蓄型医療保険と、掛け捨て型医療保険の2種類あります。

貯蓄型医療保険とは、保険料の一部が積み立てられる保険のことで、解約(満期)後に支払った金額の一部が戻ってきます。しかし、掛け捨て型医療保険の場合は積み立てしないため、解約(満期)後も、お金は戻りません。

解約後のことを考えると、貯蓄型の方が良いですが、月々の保険料は掛け捨て型の方が安く済みます。

加入できる条件

持病や重大な疾患を抱えていると加入できない保険と、持病があっても加入しやすい保険(引き受け基準緩和型・無選択型)の2種類あります。保険料は前者の方が安いものの、持病などを抱えている人は後者の方が加入しやすいです。

このように、いろいろな種類が組み合わさって、保険として販売されているのです。

民間の医療保険に加入するメリット・デメリット

民間の医療保険に加入する場合、長所もあれば短所もあります。
ここでは、メリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

メリットを3つ紹介します。

何か起こった時に見舞金がもらえる

医療保険に加入していると、見舞金が支給されます。たとえば「通院1回につき5,000円の支給」、「入院1日につき1万円」といった感じです。

医療費の自己負担が厳しい人にとっては、助かるでしょう。掛け金によっては、支払った医療費よりも見舞金の方が多くもらえる場合もあります。

保険会社のサービスを利用できる

保険会社が独自で提供しているサービスを利用できるのも魅力的です。たとえば、保険料の積立金からお金を貸し出す「契約者への貸付制度」。医者への相談ができる「医療相談サービス」などがあります。

通常数千円~数万円かかるサービスを利用できる例もあるため、お得なサービスがないか探してみると良いでしょう。

所得控除の対象になる

生命保険料控除として、所得控除の対象になります。所得控除額が増えれば、所得税や住民税が減るため、節税に役立つでしょう。

なお生命保険料控除には、「医療保険・介護保険・個人年金保険」のそれぞれに、最大4万円の控除枠が設定されています。

デメリット

デメリットも3つ見てみましょう。

保険料が発生する

最大のデメリットは保険料が発生することです。保険料は、保険会社やサービス内容、保障内容によって異なります。見舞金が高くなるほど、保険料も上がると考えて良いです。

保険料が高すぎると、生活を圧迫する原因になって、保険を解約しなければいけない状況に追い込まれる恐れもあります。

見舞金が支給されない場合がある

入院や通院をしても、保険会社が見舞金を支給する条件に該当せず、見舞金が支給されない恐れがあります。そのため、保険加入時に見舞金が支給される条件を、しっかりと確認することが大事です。

保険会社が倒産する恐れがある

保険会社が倒産すると、契約条件が変更されたり、解約後の返戻金が減ったりする恐れがあります。

倒産によるダメージを受けないためにも、財政状態が良さそうな保険会社を選びましょう。国内でも保険会社が倒産した事例はあるので、慎重に加入する保険会社を選びましょう。

民間医療保険の毎月の支払額相場

保険会社が取り扱う医療保険では、保障額やサービス内容、年齢によって異なります。生命保険文化センターの調査によると、生命保険や個人年金などの年間平均支払額は約19万6,000円でした(令和元年分)。つまり月々の平均支払額は、約1万6333円ということです。

保険会社によっては、自身の生年月日や年齢などを入力すると、シミュレーションできるパターンもあります。
実際に、保険会社のシミュレーションを利用した例を紹介します。

例 入院給付金1日5,000円、先進医療特約有。
三大疾病一時金・がん一時金、各50万円。
入院一時金10万円。退院時一時金5万円。
終身払い。31歳。

上記医療保険の場合、毎月の支払額は4,870円でした。
年齢が下がったり、加入オプションが減れば保険料は安くなりますが、逆に年齢が上がったり、加入オプションが増えたりすると、高くなります。

自身で、どのくらいの金額を支払えるか考えたうえで、特約や加入オプションを設定して保険を選ぶと良いでしょう。

民間の保険会社が取り扱っている医療保険はフリーランスに必要か?

貯金(資産)額で変わります。貯金額が十分あれば、医療保険に加入する必要性は少ないです。なぜなら、見舞金を受け取らなくても貯金額で医療費を賄えるからです。
医療費が高額になった場合も、高額医療費制度の利用も可能なため、医療保険に加入する必要はありません。

逆に貯金額が少ない時は、医療費を自己資金のみで賄えない可能性が高いため、保険に加入した方が良いです。ただし前述でも述べたように、保険料が高額だと生活を圧迫する原因になるので、ご注意ください。

民間の医療保険に加入する時の手続き

保険会社の医療保険に加入する時は、下記の方法で行います。

1.担当者と会う

インターネット上で申し込むと、担当者もしくは電話担当の人より連絡がきます。その後、指定した日にち・場所で担当者と会って、どんな保険が良いか相談しましょう。

なお、申込先は主に2カ所あります。

保険会社

1つ目は保険会社での申し込みです。保険会社での申込ですので、特定の会社の保険しか扱っていません。A保険会社での申込であれば、A社の保険しか扱ってないです。

そのため、申込先で一度に他社の保険を紹介してもらいたい人には、向いていません。

ファイナンシャルプランナー

ファイナンシャルプランナーとは、お金の専門家です。保険会社に所属していないため、さまざまな会社の保険を提示してくれます。1つの会社の保険を押し売りされる確率も低いです。

最近ではファイナンシャルプランナーが集結している事務所もあり、保険の相談を申し込んだだけで、謝礼を受け取れる場所もあります。いろいろな会社の保険を紹介してもらった上で、加入する保険を決めたい人は、ファイナンシャルプランナーに相談してみてください。

2.書類の記入

申し込む保険が決まったら、書類の記入をしましょう。住所や名前、身長や体重、疾病歴などを書きます。

その後、保険会社の審査に入り、加入できるかが決まる形です。加入できなかった場合は、再度保険を選びなおします。

3.支払い開始

審査に通過したら、支払いが始まります。支払パターンは「初回は振込で、その後は引き落とし」というパターンもあれば、初回から引き落としの場合もあります。

また、クレジットカード決済を利用できる保険もあります。クレジットカード決済であれば、カードのポイントが貯まるため、おすすめです。

テックビズゴールドカードでも、ポイントを貯められます。ITフリーランス向けビジネスゴールドカードで、豊富なサービスが受けられますので気になる方はこちらをご覧ください。

関連記事:3分で作れるテックビズゴールドカード!申込み方法と作り方

カードの種類で貯まるポイントが変わりますので、その辺りも考えた上で支払いで使うカードを決めると良いでしょう。

収入に不安があれば医療保険以外の制度を使うのも手

公的・民間の医療保険に加入しても、収入がなくなった時のことを考えている人もいるでしょう。その場合は、別の保険に加入するのも方法です。

このような保険があります。

個人年金保険

個人年金保険とは、数十年間払い続けて満期になったら、年金として受け取る保険です。満期まで支払うと、今まで支払った額の1割前後多く受け取れます(受取額は保険の制度によります)。

ただし、満期になる前に解約すると元本割れとなり、支払った額の一部しか受け取れなくなるため、ご注意ください。

収入保障保険

収入保障保険とは、収入がなくなった(働けなくなった)時に保証金がもらえる保険のことです。普段の収入によって、保険料や保障額は変わります。将来の収入が不安な人は、検討の余地アリです。

小規模企業共済

小規模企業共済は、経営者の退職金積み立て制度のようなものです。積み立てた金額を将来、退職金として受け取りたいフリーランスには良いでしょう。毎月の掛け金は、1,000円~7万円と幅広いです。

さらに掛け金は全額所得控除に組み込めるため、掛け金が増えるほど、節税の効果は高くなります。住民税や所得税額を減らしたい人は、活用すると良いかもしれません。

まとめ

医療保険全般を中心に紹介しました。
まとめると、このようになります。

✓医療保険の種類
①絶対に加入しなければいけない公的な医療保険(国民健康保険)
②民間の保険会社が販売している医療保険
✓民間の医療保険に加入するメリット
①何か起こった時に見舞金がもらえる
②保険会社のサービスを利用できる
③所得控除の対象になる
✓民間の医療保険に加入するデメリット
①保険料が発生する
②見舞金が支給されない場合がある
③保険会社が倒産する恐れがある

公的な医療保険は絶対に加入しなければなりませんが、民間の保険会社が取り扱う保険についての加入は自由です。自身のみで判断できない場合は、ファイナンシャルプランナーなど、保険に詳しい専門家を活用して相談することを、おすすめします。

※本記事の情報などは2019年11月現在の内容です。