白色申告で開業届は必要?不要?青色申告との違いを紹介

・白色申告をする時は開業届が必要なの?
・白色申告と青色申告の違いって何?
・白色申告よりも青色申告の方がいいって本当?

白色申告と開業届の関係性や、青色申告との違いを知りたい人もいるでしょう。独立すると、事業だけではなく税務のことも自分で管理しなければなりません。ここを理解できるかで、支払う税金が大きく変わります。

そこで今回は、白色申告と開業届の関係性を解説しつつ、青色申告との違いを紹介します。

そもそも開業届って何?という方はこちらで解説していますので、ご覧ください。
関連記事:【フリーランスになる前に知っておきたい】開業届の提出とメリット

白色申告の開業届は必須ではないが提出した方が良い

本来は白色申告の人も開業届の提出はすべきですが、開業届を出さなくても罰せられません。そのため、提出せずに白色申告をする人もいます。

しかし事業をする人の大半は、節税ができる青色申告を選ぶため、青色申告をする時に開業届を出すのが王道パターンです。
なお、青色申告をする時は「所得税の青色申告承認申請手続」の提出が必要で、青色申告をする年の3月15日までに提出しなければなりません(1月16日以降に事業を開始した場合は、青色申告をする年の2カ月以内)。
よって開業届も、この時期に合わせて提出する必要があります。

関連記事:開業届を出す前の収入はどうなる?青色申告で申請する方法とは?

白色申告と青色申告の違いは?

白色申告の他に、青色申告と呼ばれる形式もあります。この2つには、大きな違いがあります。

ここでは、2つの違いを紹介します。

一番の特徴は所得控除の有無

一番の特徴は、所得控除の有無です。白色申告をした人のみに認められる所得控除はありません。しかし青色申告をした場合「青色申告特別控除」と呼ばれる税制があり、最大で所得から65万円控除されます。

どのくらい税額が変わるのか、数字を当てはめて見てみましょう。

例. 所得が300万円、所得控除が50万円だった場合の所得税額

白色申告の場合
(300万円-50万円)=250万円
250万円×10%=25万円
25万円-9万7,500円=15万2,500円

青色申告で所得から65万円控除した場合
(300万円-65万円-50万円)=185万円
185万円×5%=9万2,500円

同じ所得額でも、青色申告の方が6万円安くなることが分かります。所得税の他に、住民税や国民健康保険料でも同じことが起こります。
ただし元々の所得がマイナスの場合、白色申告をしても青色申告をしても、税額はほとんど変わりません。
こちらの記事でも、白色申告と青色申告の違いを紹介しています。

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その他に青色申告のみしか適用されないルールもある

青色申告者だからこそ、利用できるルールもたくさん存在します。
代表例は、こちらです。

貸倒引当金の設定

貸倒引当金とは、売上が回収できなかった時の損失として設定する項目です。売上を回収できなかった時の積み立て金と思えば、分かりやすいでしょう。
なお、貸倒引当金を設定する時は、このような取引が発生します。

(借方)貸倒引当金繰入××(貸方)貸倒引当金××

貸倒引当金繰入は、費用の勘定科目ですので経費として計上できます。よって、経費の金額を増やして所得額を減らしたい人に、おすすめの制度です。ただし、計上できる割合は上限が設けられているため、ご注意ください。

減価償却の一括計上

青色申告の人は購入時が30万円未満の固定資産であれば、一括で費用として計上できます(=少額減価償却資産の特例)。減価償却費の一括計上は、通常は10万円未満までしか認められていません。そのため、減価償却費で当期の費用を増やしたい時には、少額減価償却資産の特例は役立つでしょう。
ただし「少額減価償却資産の特例」を使える限度額は、年間(1月1日~同年12月31日)で300万円までと決まっています。

さらに年度の途中で開業した場合は、開業初年度に限り「開業日~確定申告までの月数×25万円」が上限額となります(例.6月1日に独立した場合は、25万円×7カ月間で175万円が初年度の上限額)。
「少額減価償却資産の特例」目当てで、初期投資用の固定資産を大量購入するのは危険です。減価償却費の計画を立ててから、固定資産を買いましょう。

赤字の繰り越し

赤字が発生した場合、最大で3年間繰り越せます。
数字を当てはめて見てみましょう。

例. 今年30万円の赤字が発生し、翌年が10万円、2年後が5万円、3年後が15万円の黒字だった場合

翌年→黒字10万円-赤字10万円=0
2年後→黒字5万円-赤字5万円=0
3年後→黒字15万円-赤字15万円=0

翌年~3年の間で発生した利益に、赤字分を割り当てられるため、所得税や住民税額などを減らせます。
つまり、節税したい人にピッタリなのです。

とくに開業して間もない時期だと、初期費用が膨らんだり、顧客がいなかったりして、赤字になる場合があります。独立を考えている人は、覚えておくべきです。

節税対策についてはこちらで詳しく紹介しています。
関連記事:フリーランスが税金を抑えたい時に活用できる節税対策を紹介!

帳簿の管理は両方必要!付け方と保管のルールが違う

帳簿の管理は、白色申告・青色申告ともに必須です。しかし、帳簿の付け方と保管方法は若干異なります。

白色申告

白色申告の場合は、簡易簿記で帳簿を付けても良いことになっています。簡易簿記とは、別名「現金主義」とも呼ばれており、入出金があった取引のみ記帳する方式のことです。

仮にクレカ決済をした時であれば、カード決済(買い物)をした日の取引は記帳せず、口座からカード代金が引き落とされた日の取引を記帳します。カードを決済した段階では、お金が動いてないため、記帳する必要はありません。
記帳内容が限定されるため、青色申告時の記帳と比べるとラクです。なお、帳簿や領収書などの保管は所得に関わらず5年となっています(記帳制度適用者の場合は7年)。

青色申告

青色申告で所得から65万円控除する場合は、複式簿記で帳簿を付けなければいけません。簡単に言えば、現金以外の取引も記帳するということです。

先ほどと同様、クレカ決済した場合を例に出すと、買い物した日もカード代金が引き落とされた日も、両方記帳しなければなりません。
よって、簡易簿記と比べて記帳内容が多いです。ちなみに帳簿や領収書などの保管も7年と、白色申告と比べて長いです(請求書・見積書など一部の書類は5年の保管)。

帳簿について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事:フリーランスが覚えておきたい帳簿の種類と作成手順

白色申告で開業届を出すメリットとデメリット

ここからは、白色申告の状況で開業届を出すメリットとデメリットを見てみましょう。

メリット

メリットを3つ紹介します。

青色申告に切り替えられる

開業届を提出すると青色申告に切り替えられるため、節税に役立ちます。前述でも述べた通り、所得額から最大65万円引かれるため、白色申告時と比べてトータルの税額は安いです。

ただし青色申告を利用するには、開業届の提出以外にも条件があるため要注意。
こちらの記事には、青色申告の要件が載ってますので、合わせてご覧ください。
関連記事:フリーランスの青色申告の仕方を解説!概要・メリットとは?

屋号入りの銀行口座を申し込める

屋号入りの銀行口座を作る時は「開業届の控え」の提出が求められます。開業届を発行していれば、屋号入りの口座を作れるのです。
屋号入りの銀行口座を作れば、プライベートの入出金と分けられるため、税務管理もラクになります。

事業主としての信頼度が上がる

開業届は、独立したことを示す公的な書類であるため、事業主としての信頼度は上がります。信頼度が上がれば、法人用クレジットカードや個人事業主向けのサービスなどに申し込んだ時の通過率も上がります。
よって、事業主としてのキャリアをハッキリと証明したい人は、開業届を作るべきです。

デメリット

デメリットも、3つ見てみましょう。

失業保険を受け取れなくなる

失業給付は、無職で仕事を探している人のために支給される保険金です。
開業届を出してしまうと「就職活動をして仕事を探すつもりがない」とみなされます。失業保険の対象者から外れてしまうため、受け取れなくなるのです。
さらに開業届を出していなくても、開業の準備をした段階で、失業給付の受給資格を失います。

税金の軽減制度を使えなくなる

国民健康保険料などの一部税金には、軽減制度が設けられています。しかし、軽減制度の中には、開業届を出したために利用できなくなることがあります。
退職後に軽減制度を利用しようと考えている人は、ルールを確認してから開業届を出しましょう。

確定申告をしてないことがバレやすくなる

開業届を出すと、あなたが事業をしていることが全国に共有されるため、確定申告をしてないことがバレやすくなります。
ただ確定申告は、開業届の有無にかかわらず提出しなければなりません。よって、出してない時点で法律違反です。

開業届を出すなら青色申告が断然良い

開業届を出す場合は、白色申告よりも青色申告の方が良いです。青色申告承認申請書の提出や複式簿記での作成など、白色申告と比べると手間はかかりますが、その分さまざまな節税制度が用意されています。白色申告の時と比べて所得額を100万円以上減らすことも可能です。

青色申告の仕方が分からない人の中には、税務署で指導してもらう人もいます。しかし、そうは言っても自分で青色申告をすることが、面倒な人もいるでしょう。その場合は、税理士と顧問契約を結んで、確定申告を代行するのも1つの方法です。
関連記事:税理士はフリーランスの味方!税務はプロに任せよう!

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まとめ

今回は、白色申告と開業届の関係性・青色申告との違いを中心に解説しました。
大事なポイントは、こちらです。

✓白色申告時に開業届は必要か?
①開業届の提出は必要。だが罰則がないため提出しない人もいる
✓白色申告と青色申告の違い
①青色申告には所得から最大65万円控除できる制度があるが、白色申告にはない
②青色申告では赤字の繰り越し・少額減価償却資産の特例があるが、白色申告にはない

開業届を出して青色申告を利用した方が、節税効果が大きくなるためおすすめです。
簿記の知識がない事業者も、多くの人が青色申告を利用しています。節税効果を高めたい人は、ぜひ青色申告を検討してみてはいかがでしょう。

※本記事の内容などは2019年12月現在の情報です。