・厚生年金と国民年金は何が違う?
・独立後は国民年金に加入しないといけない?
・国民年金だけで将来大丈夫?
年金は、大きく分けて国民年金と厚生年金の2種類あります。フリーランスとして独立する場合、国民年金に加入しなければいけません。
とはいえ、国民年金と厚生年金の違いがいまいちわからない人もいるでしょう。
そこで今回は、国民年金と厚生年金の違いを解説します。国民年金への加入手続きの方法や国民年金だけでは将来が不安と思われる人が取れる対策などもお伝えしますので、参考にしてください。
【前提】厚生年金も国民年金も公的年金制度の一部
国民年金と厚生年金の違いを見ていく前に、まず前提として、どちらも公的年金制度の一部であることは理解しておきましょう。公的年金制度とは、国や地方自治体によって運営されている年金制度のことです。
公的年金制度は20歳以上60歳未満の全ての人が加入する必要があり、大きく分けると、国民年金と厚生年金に分けられます。公的年金ではない年金で言えば、私的年金というものもあり、勤務先や個人が任意で準備できる年金も存在します。
国民年金と厚生年金の違い
国民年会と厚生年金は主に以下の5つの点で違いがあります。
①加入対象者
②支払額
③負担割合
④年金受給額
⑤免除制度
①加入対象者
国民年金と厚生年金で加入対象者に違いがあります。
国民年金
対象者は20歳以上60歳未満の全ての人です。国民年金に加入している人は、以下の3種類に分けられます。
対象者 | 職業 | |
第1号被保険者 | 20歳以上60歳未満で、第2号被保険者、第3号被保険者以外の人 | ・自営業者 ・農業者 ・漁業者 ・以上の者の家族 ・学生 ・無職 |
第2号被保険者 | 原則70歳未満の人 | ・公務員 ・会社員 |
第3号被保険者 | 第二号被保険者に生計を維持されている20〜60歳未満の配偶者 | ・専業主婦・主夫 |
厚生年金は、国民年金に上乗せする年金ですので、厚生年金の人も国民年金に加入していることになります。
厚生年金
対象者は国民年金に加入している人のうち、第2号被保険者の人です。具体的な職業で言えば、公務員や会社員として働いている人が対象になります。
厚生年金は国民年金にプラスして給付される年金なので、国民年金よりも手厚いものだと思っておいて良いでしょう。
ちなみに、第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている人ですが、国民年金のみの加入になります。
②支払額
国民年金と厚生年金で支払額も違ってきます。
国民年金
国民年金は、収入に関係なく支払額が決まっています。2020年度の支払額は16,540円/月でした。
月々の支払額は年度によって変わってきます。
厚生年金
標準報酬月額によって違います。保険料は毎年4〜6月に受け取った毎月の給与額の平均額(標準報酬月額)に保険料率をかけて算出します。
一般企業の会社員であれば、保険料率は18.3%です。仮に標準報酬月額が20万円である場合は、20万円×18.3%となるので1カ月間の保険料は3万6,600円です。
また、給与だけではなく賞与にも厚生年金保険料はかかってきます。1回の税引き前の賞与額から1,000円未満を切り捨てた額を標準賞与額とし、それに保険料率をかけて算出します。150万円を超える場合は、標準賞与額は一律で150万円です。こちらも頭に入れておきましょう。
③負担割合
国民年金と厚生年金で負担割合も変わってきます。
国民年金
国民年金の場合は全額自己負担です。2020年度で言うと年間で198,480円の支払いが必要でした。
毎年支払額が変動しますが、それほど大きくは変動しませんので、大体年間20万円はかかることを覚悟しておきましょう。
厚生年金
厚生年金の場合は、企業と従業員で折半します。さきほどの3万6,600円を例にすると、実質自己負担額は1万8,300円です。
実際自分がどれくらいの年金額を負担しているのか気になる人は、給料明細を確認してみると良いでしょう。
④年金受給額
公的年金で受け取れるのは、以下の3つです。
受給者 | 条件 | |
老齢年金 | 被保険者本人 | 65歳に達した場合 |
障害年金 | 被保険者本人 | 病気や怪我が原因で、障害認定を受けた場合 |
遺族年金 | 被保険者の遺族 | 生計維持関係にある被保険者が死亡した場合 |
国民年金
国民年金加入者は、老齢基礎年金を65歳になると受け取れます。ただし、受給資格があるのは、10年(120ヵ月)以上の納付をしていた人のみです。
受給額は、「物価スライド方式」と言って、毎年物価の変動に応じて変化します。令和3年度の受給額は、40年間支払いを全てした人で月額65,075円です。
未納期間がある人は、その期間に応じて受給額も減額されますので、注意しましょう。
厚生年金
厚生年金加入者は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを65歳になると受け取れます。受給資格があるのは、老齢基礎年金の受給条件を満たしていて、かつ厚生年金の被保険者期間が最低1ヶ月でもある人です。
受給額は、支払った保険料に応じて変わってきます。給料が多く、厚生年金保険料を多く支払っていればいるほど、受給できる金額も多くなります。
具体的にいくらになるか算出しようと思うと、計算式は非常にややこしくなります。しかし日本年金機構が運営する「ねんきんネット」を利用すれば、受給できる予定金額を算出できます。
ねんきんネットで計算するためには、登録が必要になりますので、気になる人は登録しておきましょう。
⑤免除制度
公的年金の支払額を免除する制度も、国民年金と厚生年金で異なってきます。
国民年金
国民年金加入者には所得額が一定基準を下回った人向けの免除制度があります。具体的な制度は以下の通りです。
全額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円4分の3免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等半額免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等4分の1免除
前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等出典:日本年金機構
仮に1人暮らしであれば、年間の所得が57万円を下回ると全額免除の条件をクリアできます。免除をすれば年金保険料が減るので、金銭的負担は減ります。しかし年金受給額も減ることは覚えておきましょう。
その他に出産予定月(出産した月)から4カ月間、免除される制度(国民年金保険料の産前産後期間の免除制度)もあります。
厚生年金
厚生年金加入者には、出産前後の休業・育休を取得している人向けの免除制度(産前産後休業期間中の保険料免除、育児休業等期間中の保険料免除)があります。事業者が日本年金機構へ申請することで認められます。
免除した期間も年金保険料を納めた月としてカウントされるのが特徴です。そのため、免除制度を利用したとしても受給額が減額されることはありません。
会社員からフリーランスになるときは厚生年金から国民年金へ切り替える
会社員からフリーランスになるときには、厚生年金の加入資格を失うため、国民年金への切り替えが必要です。会社員時代とは違って、会社がやってくれるわけではなく、自分で手続きをしなければなりません。
ここでは、国民年金への切り替え方を見てみましょう。
手続場所
居住地を管轄する役所(役場)にある、国民年金保険料担当の窓口で手続きをします。自治体によっては、郵送での手続きも認めています。
郵送の場合、申出書が各自治体のホームページからダウンロードできるはずですので、そちらの用紙も準備して送るようにしましょう。
必要な書類
国民年金への切り替えの際は以下の資料が必要です。
・年金手帳
・退職時に会社から発行される「離職票」「健康保険資格喪失証明書」「退職証明書」
・運転免許証やパスポートなどの身分証明書
・印鑑
・銀行口座がわかるもの
・クレジットカード
年金手帳がない場合は、最寄りの年金事務所へ申請すると後日、郵送で送られてきます。国民年金は、納付書か口座振替、クレジットカード払いのいずれかになります。
口座振替やクレジットカード払いを希望する場合は、銀行口座がわかるものやクレジットカードを持っていくようにしましょう。
提出期限
退職日の翌日から、2週間(14日)以内に提出してください。2週間を超えてしまった場合も、国民年金に加入できないわけではありません。
退職をして、次の会社で新たに厚生年金に加入したり、配偶者の被扶養者になったりする場合以外は、全員が国民年金加入者になります。ただし、手続きを行わないと国民年金保険料の支払いができず、未納期間が発生してしまう場合もあります。
将来受給できる金額を減額したくない人は、期限内に提出するようにしましょう。
フリーランスで老後が不安な人がとれる対策
先ほど述べた通り、国民年金は厚生年金と比べて年金受給額が少ないです。しかし、別の以下のような対策をすることで、老後に受け取れるお金を増やすことができます。
①国民年金基金制度
②個人型確定拠出年金(iDeCo)
③小規模事業共済
それぞれ見ていきましょう。
①国民年金基金制度
国民年金基金制度とは自営業・フリーランスが老齢基礎年金に上乗せできる制度です。国民年金と同じく終身年金なので、65歳から死ぬまでもらうことができる年金です。
支払う金額に応じて、受給できる金額も増減します。支払額は、口数単位で増減でき、1口当たりの料金は選択した給付の型、加入口数、加入時の年齢、性別によって変わってきます。
1口当たりの金額と受給金額については、国民年金基金の公式ページから確認してください。また掛金の上限は月額68,000円ですが、iDeCoも利用している場合は、2つの掛金を合算した金額が月額68,000円までとなります。
掛金は全て社会保険料控除の対象になりますし、受け取る年金も公的年金等控除の対象となります。ただし、一度加入した場合は、個人的な理由で途中で解約したり、掛け金を引き出したりすることはできませんので、注意しましょう。
②個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金、通称iDeCoとは、掛金を積み立て、その積み立てた掛金を元に金融商品を自分運用しながら、資産を築く年金制度のことです。利益が発生すれば受給額は増え、損失が発生すれば受け取れる受給額は減ってしまいます。
運用する金融商品は、株式や国債、定期預金など様々で、下記のように、好きな割合で運用先を決められます。
・定期預金50%、国内株式30%、外国株式20%
・国内株式40%、新興国国債30%、定期預金30%
掛金は毎月5,000円からで、1,000円刻みで設定でき、年に1回変更することができます。上限金額は第何号被保険者なのかによって変わり、iDeCo公式ページで確認できます。
また、運用した掛金は、60歳になるまでは引き出すことができず、60歳になって初めて運用結果分も含めた金額が受け取れます。
掛金は全額所得控除されますし、受け取り時も各種控除の対象とされ、一定額まで税金はかからないため、節税効果も期待できるでしょう。
③小規模事業共済
小規模事業共済は「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」が提供している積立制度です。年金制度ではありませんが、廃業時に積み立てた金額のの80%~120%相当額を受け取れます。会社員の退職金のようなものというイメージを持つといいでしょう。
途中で解約することもできますが、受取額は、掛金納付月数に応じて変わってくるため、20年未満で解約してしまうと原本割れしてしまいます。逆に20年間以上の支払をしていれば、掛金より多くの金額を受給できます。
毎月の積立金額は1,000円~70,000円までで、500円単位で調整可能です。掛金全てが所得控除されますが、受け取り時は課税対象になります。
フリーランスでも退職金のようなものが受け取れるため一見良い制度のように思えますが、事業を廃業せずに20年以上も続けられるかどうか慎重に考えてから、申し込むべきでしょう。
まとめ
①加入対象者
②支払額
③負担割合
④年金受給額
⑤免除制度
会社を退職し、フリーランスになった場合は国民年金に加入するのが義務です。手続きを忘れてしまうと、国民年金保険料の未納期間が発生し、将来もらえる年金が減ってしまうので注意しましょう。
会社員からフリーランスになると、社会保険の点でも違いがあります。以下の記事で、社会保険と国民健康保険の違いについて説明していますので、参考にしてください。