フリーランスや法人の引っ越し費用は経費で落とせる?仕訳方法や条件を解説

・フリーランスの引っ越し費用は経費にできるのか
・フリーランスと法人で経費にできる金額は違うのか
・引っ越し費用はいくらまで経費として認められるのか

引っ越し費用を経費化する方法について混乱している方も多いでしょう。引っ越し費用には経費として扱われない部分も存在するため、計上を間違えないようにしなければなりません。そこで、今回は引っ越し費用の経費化の手順、会計処理、条件、そして注意点について詳しく解説します。

フリーランスや法人の引っ越し費用は経費で落とせるのか?

フリーランスや法人が引っ越し費用を経費として計上することは可能です。ただし、計上できる金額は条件により異なる場合があります。

すなわち、全額を経費に計上できる場合もあれば、引っ越し費用の一部のみを経費に計上するシチュエーションも存在します。これらの情報を考慮に入れて、次の章からの詳細な説明をお読みください。

フリーランスが自宅を事務所と兼用する場合の条件

物件を自宅と事務所として同時に使用する場合、その引越し費用の一部を経費として申告できます。経費として認められる金額は、物件を事務所として使用する時間や広さに依存します。事務所としての利用時間が短い、あるいは使用スペースが限られている場合、経費として計上可能な部分は少なくなる可能性があります。

仕訳方法

仕訳方法は、下記の通りです。

例.引っ越し費用10万円を現金で支払い、そのうち40%を事業分とした時の仕訳

借方
支払手数料4万円
事業主貸6万円
貸方
現金10万円

このパターンでは、4万円は「支払手数料」として経費に計上します。6万円は「事業主貸」という勘定科目を使用し、これはプライベートで支払った金額を示しています。なお、「支払手数料」は、荷造運賃や雑費としても計上することがあります。

注意事項

経費として計上する際には、計上する割合に注意しましょう。事務所として利用するスペースが少ないのにも関わらず、大きな金額の引っ越し費用を経費にすると、税務調査の際に問題が指摘され、税金が増える可能性があります。引っ越し費用を経費として計上するときは、税務署の職員が納得するような金額に設定することをおすすめします。

仕訳方法

仕訳方法は、下記の通りです。

例.法人事務所に関する引っ越し費用10万円を、現金で支払った時の仕訳

借方
支払手数料10万円
貸方
現金10万円

住居(プライベート)に関する引っ越しが絡んでいないため、全額経費として計上できます。

この場合も、借方の勘定科目は、雑費や荷造運賃を使うケースがあります。

注意事項

企業だけでなく、個々の場合にも引越し後は税務署への異動届提出が必要です。引越し後の手続きを怠ると、前の住所に重要な書類が送られる可能性がありますので、忘れずに行ってください。

控除額の適用範囲を求める計算方法

特定支出控除額の適用範囲を計算する方法は、「その年の給与所得控除額の半分」です。例えば、その年の給与所得控除額が300万円だったとすると、「300万円の半分」である150万円が特定支出控除の適用範囲となります。これは、特定支出が150万円を超過した部分について、給与所得控除後の所得金額から控除することが可能であることを意味します。たとえば特定支出額が200万円だった場合、給与所得控除後の所得金額から50万円(200万円から150万円を引いた額)を控除することができます。

注意事項

特定支出控除を活用する際には、会社から証明書の発行を受ける必要があります。自己判断で必要と思い支払った費用であっても、会社からの証明書発行がない場合は、特定支出として認識されませんので、注意が必要です。

引っ越しの経費になる費用と経費にならない費用

前述でも少し触れましたが、引っ越し費用の中には経費になる項目もあれば、ならない項目もあります。

ここでは、引っ越し時に発生する代表的な費用5つを例に出して、経費になるかならないかを紹介します。

敷金

敷金は資産として扱われるため、経費として計上できません。

礼金

礼金は繰り延べ資産として一括処理した後に、5年間(5年未満の契約であれば契約期間)にわたって、経費の計上をします。

仕訳例は下記の通りです。

1.礼金40万円(5年分)を現金で払った

借方
長期前払費用40万円
貸方
現金40万円

2.1年分の礼金(8万円)を費用として計上した

借方
地代家賃8万円
貸方
長期前払費用8万円

なお、礼金が20万円未満の場合は、経費(地代家賃)として一括計上できます。

不動産屋への仲介手数料

仲介手数料も、経費として認められています。勘定科目は「支払手数料」を使います。

引越し業者への支払い

引越し業者への支払いは、経費として計上することが可能です。通常、勘定科目としては「雑費」、「支払手数料」、「荷造運賃」のいずれかが用いられます。しかし、支払い金額が大きい場合には、「雑費」の利用は控えるべきです。

火災保険などの保険料

物件に対して発生する保険料も、経費として計上可能です。

勘定科目は「支払保険料」です。

保険料を支払った時の仕訳は、1の通りです。

1.2022年8月1日~2022年7月31日までの火災保険料12,000円を現金で支払った(当期の決算日:2022年12月31日)

借方
支払保険料1万2000円
貸方
現金1万2000円

2022年8月1日~12月31日(5カ月分)の費用は当期の費用ですが、2023年1月1日~2023年7月31日(7カ月分)については、次期の保険料となるため、経費から外さなければなりません。
そのため、決算時に次期の保険料を前払費用に振り替える仕訳が発生します。
前払処理の仕訳は、2の通りです。

2.2022年12月31日の決算につき、7カ月分の火災保険料7000円を前払費用に振り替えた

借方
前払費用7000円
貸方
支払保険料7000円


前払費用を支払保険料に振り替える仕訳は、3の通りです。その後、2023年1月1日(翌期首)付で再度、前払費用を支払保険料に振り替える仕訳をします。

3.2023年1月1日を迎え、前払費用を火災保険料に振り替えた

 

借方
支払保険料7000円
貸方
前払費用7000円

経費は申告が必須

経費として認識させるためには、確定申告の書類を作成し、税務署に提出し、受理される必要があります。言い換えると、申告を行わないと経費が税金に反映されず、節税効果は得られないということです。期限内に申告を行い、適切に経費として計上しましょう。

転居前・転居後の手続きを紹介

引っ越し費用に関する話をしていますので、転居前と転居後に行うべき内容も紹介します。

転居前に行うこと

  • 引っ越しスケジュールの確認
  • 転出届の提出
  • 不用品の処理
  • 郵送の住所変更申請
  • 電気・ガス・水道の停止手続き
  • 転居先の電気・ガスの利用申請
  • インターネットの解約
  • 転居先のインターネット契約の申し込み
  • お世話になった人への挨拶(できれば)

転居後に行うこと

  • 転入届の提出
  • 国民健康保険、国民年金の住所変更
  • 運転免許証の住所変更
  • 預金口座の住所変更
  • ご近所への挨拶(できれば)

期限は、申請内容によって異なるため、早い段階で確認しておきましょう。

まとめ

引っ越し費用を経費として落とせるかを中心に解説しました。

今回押さえた方がいいポイントは、こちらの通りです。

✓引っ越す時の費用を経費にする時のポイント
①自宅兼事務所にする場所へ引っ越す場合は、全額経費にできない
②税務署員に納得してもらえそうな金額を、経費として計上する
③引っ越し費用の中には、経費として計上できない項目がある(敷金など)

経費として計上できる引越し費用は、物件の利用方法によって異なります。ただし、考えずに引越し費用を経費にすると、申告後に税務署から指摘され、追徴課税される可能性もあります。したがって、どの程度の金額を経費として計上するか慎重に考えながら、経費の計上を行ってください。

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