・開業届の控えって再発行できるの?
・開業届の控えはなくても困らないんじゃないの…。
フリーランスの中には、開業届の控えについて上記の疑問を持つ人もいるでしょう。どのような書類だったかすら、思い出せない人もいるのではないでしょうか?
しかし、独立後は開業届の控えが必要となる場面もあります。そこで今回は開業届の概要を簡単におさらいしつつ、開業届の控えを再発行する方法も、合わせて見てみましょう。
【簡単におさらい】そもそも開業届とは何か?
開業届とは、事業開始したことを宣言する時に記入する書類で、税務署へ提出します。書類の正式名称は、開業届ではなく「個人事業の開業・廃業等届出書」です。必要箇所を記入して提出します。
ここでは、記入時に注意すべき箇所も見てみましょう。
納税地
納税地は、住所地or居所地or事業所等の中から選択しますが、基本的には住所地です。しかし、特例で居所地や事業所等での納税が認められます。
個人番号
個人番号とは、マイナンバーカードor通知カードに記載されている12ケタの番号のことです。数年前から、個人番号の記載が必須となりました。
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職業・屋号
職業とは、どんな業務に携わっているかです。エンジニア・ライターなど、いろいろな職業があります。記入した職業によって、経費として計上できる費用が変わります。
なお、複数の職業で事業を営む場合は、メインの職業を書いてください(例.エンジニアなど)。
開業日
開業日は、事業を始めた日を書きます。すなわち、開業届を提出した日以外の日付を書いても大丈夫です。ただし、事業を始めてから1カ月以内に提出しなければいけないルールがあるため、覚えておきましょう。
事業の概要
どんな事業をするか、概要を詳しく書きます。たとえば、エンジニアの場合は「プログラミングに関する業務、セキュリティサポート業務」などと記入します。自分が携わる可能性がある業務は、可能な限り網羅した方が良いでしょう。
さらに詳しくはこちらをご覧ください。
関連記事:開業届とは?フリーランスにとってのメリットと提出方法を解説!
開業届を出さずに事業をしてもOKだがマイナスもある
なお、法的には開業届を出さずに商売するのは認められています。しかし、開業届を出した人と比べると損をすることがあります。たとえば確定申告では、青色申告が認められていません。よって、節税のパフォーマンスが小さくなります。
関連記事:フリーランスの青色申告の仕方を完全解説!概要・メリットとは?
さらに事業を継続している年数を証明しようと思っても、開業届を出していないため、年数が分かる公的な書類はありません。
関連記事:開業届を出す前の収入はどうなる?青色申告で申請する方法とは?
開業届の控えを保管しておくべき理由
開業届の控えを保管すべき理由は、こちらの2つです。
開業した日を確認するため
取引先から、開業した日を教えてほしいと言われる場合があります。その時に開業届の控えがあれば、正確な開業日を確認できるため、間違った内容を伝えずに済みます。
開業届の控えが必要になるかもしれない
書類を送付する時に、開業届の控えが必要になることもあります。取引先の事業年数が本当に合っているのか、確認する意味で開業届の控えを提出させる場合もあるため、保管すべきです。
なお、開業届の控えが必要になる場面は、次の章で紹介します。
いつ開業届の控えが必要になるか
ここでは、開業届の控えが必要になる場面を、具体的に見てみましょう。
金融機関から融資を受ける時
金融機関などから融資を受ける時は、開業届が必要になります。申込時に、開業届の控えを提出させる金融機関がほとんどです。本当に事業をしているか確認するために、多くの金融機関では義務化しています。
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税理士と顧問契約を結ぶ時
税理士と顧問契約を結ぶ時も、開業届の控えを提出する可能性が高いです。個人事業主の中には、税理士に経理業務を任せて、青色申告をお願いする人もいます。しかし前述の通り、青色申告をする時は、開業届を提出しておかなければなりません。
仮に開業届を提出していない状況で、税理士が代行して青色申告をすると、税務署から連絡が来ます。しかも確定申告書には、作業をした税理士の名前が載っているため、税務署との信用問題にも関わります。税理士が信用を落とさない意味でも、顧問契約を結ぶ時に開業届の控えを提出するケースは、大いにあるものだと思って良いでしょう。
法人(個人事業主)のクレジットカードを申し込む時
法人のクレジットカードを申し込む時も、開業届の控えを提示する場合が多いです。なぜなら、カードの審査では事業の継続年数をチェックするからです。一般的には事業の継続年数が長ければ審査面でプラス、短ければマイナスになります(カード会社によって審査条件は異なります)。
その他に、開業届の控えに載っている事業の継続年数と、カードの申込書に記入した年数が一致しているか調べる、意味合いもあります。
小規模企業共済に加入する時
開業初年度に、小規模企業共済に加入する時も、開業届の控えを求められます。
小規模企業共済に申し込む時は通常、確定申告書の提出で大丈夫です。しかし、開業初年度は確定申告をしていないため、手元に確定申告書の控えがありません。よって、確定申告を提出してない状況で加入する時は、開業届の控えが必要となります。
QRコード決済を始める時
QRコード決済の導入をする時も、開業届の控えを求められる場合があります。物品を売った時だけではなく、セミナーやイベントの参加料の支払いをQRコードで済ませたい人にも便利です。硬貨や紙幣の受け渡しがないため、お金の管理がラクになります。
開業届の控えの特徴・受け取り方
開業届の控えは、開業届を提出した後に、税務署の印鑑が押された状態で受け取ります。
ただし開業届を出した時に、控えが不要と答えた場合、発行されません。つまり、事業をしている人が全員、開業届の控えを受け取っているとは限らないのです。
開業届の控えを再発行手続きする方法
開業届の控えを紛失しても、再発行できます。ここでは再発行手続きの方法を、3つのステップに分けて見てみましょう。
1.保有個人情報開示請求書に記入する
保有個人情報開示請求書とは、自身の個人情報を確認したい時に提出する書類です。氏名や住所、連絡先の他に、開業届の写しを交付したい旨を記入します。本人が記入できない場合は、法定代理人が請求しても大丈夫です。
国税庁:保有個人情報開示請求書
2.記入後、必要書類と手数料とともに提出する
保有個人情報開示請求書への記入が完了したら、身分証明書のコピーを手数料(1件300円)とともに提出します(法定代理人の場合は提出する書類が異なります)。さらに、郵送の場合は住民票の写しが必要です。
なお、身分証明書として個人番号(マイナンバー)カードの写しを提出する時は、表面のみ印刷します。また、住民票の写しを提出する時は、マイナンバー部分を黒塗りにすることも忘れないでください。
3.2週間~1カ月程度で控えを受け取れる
提出後は、2週間~1カ月程度で控えを受け取れます。保有個人情報開示請求書を提出した当日には控えを受け取れないため、余裕を持って申請しましょう。
新しく開業届を出して控えをもらうのは止めた方が良い
開業届の控えを再発行せずに、新規で開業届を作成して、控えをもらう人もいます。しかし、それは辞めた方が良いです。なぜなら、税務署に怪しまれる可能性があるからです。
新たに開業届を出した場合「なぜ新たに開業届を出したのか?」と、税務署から疑われる恐れがあります。結果、税務調査が実施されるかもしれません。税務調査では、最大で7年分の税務申告状況を調べます。なかには、数千万円もの追徴金を命じられた人もいます。
税務調査の対象にならないためには、目立った行動を取らずに税務署から疑われないことが大事です。
廃業後、再度事業を立ち上げる場合は大丈夫
個人事業主の中には廃業をしたから、再度事業を立ち上げる場合もあります。その時は、新たに開業届を出しても大丈夫です。
しかし廃業した直後に開業届を出した人の中には「計画倒産をしたのではないか?」と税務署から疑われて、税務調査の対象になる人もいます。そうなっても良いように、普段からルールに則って確定申告をすることが大事です。
開業届の保存の仕方
開業届の保存が大事なことが分かったものの、保存をしても失くすのが心配な人もいるでしょう。
ここでは、開業届の保存の仕方を3つのポイントに分けて紹介します。
1.透明のクリアファイルに入れて保管しておく
透明のクリアファイルに入れておくと、外から見て何の書類が入ってるか分かるため、紛失するリスク&開業届を探す時間の短縮につながります。
瞬時に開業届の控えを見つけたい場合は、クリアファイルに付箋を貼っておき、外から見て分かるようにするのも方法です。大きな付箋を貼り、目立つようにしておけば見つけやすくなるでしょう。
2.他の書類と同じクリアファイルに挟まない
他の書類と同じクリアファイルに挟まないのも紛失しないコツです。他の書類が入っているクリアファイルに挟むと、探す時の手間がかかります。
もし、他の書類も同じファイルに入れたい時は、アルバム式に入れるのが良いです。アルバムであれば、書類を入れる場所を分けられるため便利です。
その他に、端に穴が空いたクリアファイルをリング式のアルバムに綴じて保管しても、紛失するリスクを減らせます。
3.確定申告関係の書類とまとめておく
確定申告関係の書類と一緒の場所に保管するのも大事です。用途ごとで書類を置く場所を決めておけば、開業届の控えをどこに保管しているか分かりやすくなるでしょう。
イメージ的には、開業届と確定申告書、青色申告の承認依頼書の控えを一緒の場所に保管する形です。保管場所を決めておけば、仮に開業届の控えを移動させたとしても、所定の場所に片付けるだけなので、どこに置いたか分からなくなる確率も下がります。
しかし、そうは言っても書類を保管する場所がなくて、1カ所に書類がたくさん入っていて、取り出すのが難しくなる場合もあるでしょう。その時は、書類の整理整頓をこまめに行うことが大事です。不要な書類を捨てることで、保管する書類の量が減るため、開業届の控えを見つけやすくなります。とは言っても、全て捨てられない場合もあるでしょう。
その時は、下記のいずれかの方法を使うと良いです。
PDF化する
PDF化して、コンピュータのデータ上で書類を保存する方法です。書類の中には、現物がなくても閲覧さえできれば大丈夫なケースもあります。
わざわざ、現物を保管する必要がない書類については、PDF化すると書類の保管スペースが空くため便利です。自宅にPDF化する機械がない場合は、コピーサービスを提供している「キンコーズ」などへ行くと、PDF化してもらえます。
別の場所に保管する
どうしても書類を現物で保管する場合は、別の場所に保管する手もあります。
保管先として、これらの場所を活用できます。
- 実家
- トランクボックス
- 書類を保管する専用の倉庫
段ボールに入れた書類を、倉庫に保管してくれる業者もあるため、活用すると良いでしょう。ただしトランクボックスや業者の倉庫に保管した場合、保管料が毎月発生します。そのためコストを抑えたい人は、実家に預けるかPDF化して保管する方法をとった方が良いでしょう。
まとめ
今回は、開業届の控えを再発行する時の方法などを紹介しました。
まとめると、こちらになります。
①開業した日を確認するため
②開業届の控えが必要になる可能性がある
①保有個人情報開示請求書に記入する
②記入後、身分証明書の写しと手数料を提出する(郵送の場合は住民票の写しも提出)
③2週間~1カ月程度で控えを受け取れる
開業届の控えがないと、独立後に困ることがあるかもしれません。その影響で、事業に悪影響を及ぼすこともあります。必要になった時に開業届の控えを見つけ出すためにも、普段から分かる場所に保管しておきましょう。