フリーランスは屋号を付けるべき?メリットやデメリット解説

・フリーランスに屋号は必要なの?
・どんな屋号を付けてもいいの?
・フリーランスが屋号を付けるメリット・デメリットは?

結論から言えば、フリーランスには屋号はあってもなくてもどちらでも大丈夫です。開業届には屋号を書く欄が設けられているものの、必要でなければ屋号を書く欄は空欄で提出しても問題ありません。

独立後に屋号を付けることもできるので、後から自分の好きなタイミングで付けるのもいいでしょう。では屋号とはそもそもなんのためにあるものなのでしょうか。

今回は、フリーランスが屋号を付ける意味やメリット・デメリット、付ける上でのポイントや注意点をお伝えします。屋号についての理解を深め、自分はどうするべきか判断できるようにしてください。

そもそも屋号とは?

屋号とは

そもそも屋号とは何でしょうか。国税庁では以下のように定義されています。

屋号(又は雅号)とは、個人事業者の方が使用する商業上の名のことです。よって、個人事業者の方においては、商店名等を入力してください。
(参考)税務署に提出する個人事業の開業・廃業等届出書にも屋号欄があります。

雅号とは、著述家、画家、書家、芸能関係者などが本名以外につける別名のことです。

出典:国税庁

簡単に言えば、法人でいうところの「〇〇株式会社」などの会社名をことを指します。個人事業主の中にも、お店や事務所を構える人もいて、営業するときの名前として使われます。

ITフリーランスなどの場合、お店や事業を構える人は少ないため、屋号を付ける人もいれば屋号を付けない人もいます。

フリーランスが屋号を付けるメリット

フリーランスが屋号を付けるメリット

屋号を付けなくてもフリーランスとして活動できるものの、屋号を付けておくと以下の4つのメリットがあります。

フリーランスが屋号を付けるメリット
①屋号があると覚えてもらいやすい
②屋号で事業用の口座が作れる
③取引先からの信頼度が高くなる
④法人化する時に楽になる
それぞれ見ていきましょう。

①屋号があると覚えてもらいやすい

屋号を付けることで、取引先や同業者の印象に残りやすくなります。自分のことや事業のことを簡潔にかつ、インパクトのある屋号が付けられれば、一度で覚えてもらえるでしょう。

取引先や同業者からどれくらい自分や自分の事業のことを覚えておいてもらえるかは、フリーランスが仕事を獲得する上でも重要な要素のひとつです。個人名でも問題はありませんが、セルフブランディングのために屋号を付けることも検討してみてください。

②屋号で事業用の口座が作れる

屋号を付けると、屋号で事業用の口座を作ることができます。屋号で事業用の口座が作れると、事業用のお金とプライベート用のお金を分けることができ、経理業務が楽です。

個人名義でも2つ口座を作って、事業用と個人用に分けることはできますが、屋号で作っておいた方が取引先に振り込んでもらう際にも、信頼してもらいやすいでしょう。

またクレジットカードで、ビジネス用のものを申し込む時には、事業主であることの証明が必要となるため、カード会社から屋号入りの口座を求められることもあります。ビジネス用クレジットカードを作る予定のある人は、屋号入り口座を作っておくといいでしょう。

フリーランスが持つべきクレジットカードについては以下の記事で詳しく解説しています。

③取引先からの信頼度が高くなる

屋号を付けると、取引先からの信頼度が高くなります。きちんと事業を営んでいることが、明確にわかるためです。

また、個人事業主が加入できる組合で、屋号がないと加入できないものもあります。そのため何かしらの団体に加入しようと思っている人も、屋号を事前に付けておくといいでしょう。

④法人化する時に楽になる

独立当初に付けた屋号は、法人化した時に引き継げます。引き継ぎをすると、金融機関に過去の実績を提示する時に便利です。

たとえば法人化する際に融資を受ける場合、金融機関から過去の実績を提示するよう求められることがあります。仮に個人事業主時代に屋号がなかったとすると、個人事業主時代の実績は認めてもらないこともあります。

というのも屋号が違い、あなたの実績である証明ができないためです。金融機関に屋号がない個人事業主時代の実績を認めてもらうには、それなりに準備が必要です。

手間も時間もかかるため、将来的に法人化を考えている人は、個人事業主の時から屋号を付けておくようにしましょう。

フリーランスが屋号を付けるデメリット

次にフリーランスが屋号を付けるデメリットを見てみましょう。

フリーランスが屋号を付けるデメリット
①屋号を考えるのが手間
②自分の名前を覚えてもらえないかもしれない
それぞれ見ていきましょう。

①屋号を考えるのが手間

数分で屋号が思い付けばいいですが、人によっては何週間・何か月もかけて考える人もいます。そのため、考えるのに手間が取られてしまうのはデメリットと言えるでしょう。

一度決めたとしても、やっぱり変更したいと思うことも出てくるかもしれません。いつでも自由に変更はできますが、変更すると税務署や金融機関、取引先などに連絡しなければならないため、時間もかかります。

屋号を考えるのに手間も時間も取られて、本業に支障をきたさないように注意しましょう。

②自分の名前を覚えてもらえないかもしれない

屋号は覚えてもらったものの、自分の名前を覚えてもらえない場合もあります。屋号を付けることは、仕事の獲得に繋がると先述しましたが、名前もセットで覚えてもらう必要があります。

取引先などには、屋号だけを伝えるのではなく、屋号と氏名の両方を必ず伝えるようにしましょう。また、名刺を作っておくと、屋号と名前両方を取引先などにすぐに提示できるため便利です。

フリーランスが屋号をつくる時の注意点

フリーランスが屋号を付ける上での注意点

屋号はある程度自由に決められますが、守らなければならないルールもいくつかあります。屋号をつくる時には以下の4点には特に気を付けましょう。

フリーランスが屋号を作る時の注意点
①会社だと勘違いされる名称は避ける
②使える記号は6種類だけ
③商標権を侵害してはならない
④他の人と被らないようにする
1つずつ詳しく解説していきます。

①会社だと勘違いされる名称は避ける

「〇〇株式会社」「合同会社〇〇」「〇〇inc」など、会社だと勘違いさせる名称は付けないようにしましょう。法人化を予定している人で、将来「〇〇株式会社」と名付けたいなら、個人事業主の屋号は「〇〇」のみにしておきます。

株式会社や合同会社ではないのに、会社という名称を付けてしまうのは法律違反です。絶対にしないようにしましょう。

②使える記号は6種類だけ

屋号には以下の6種類の記号以外は使えません。

1.「&」
2.「’」
3.「.」
4.「‐」
5.「・」
6.「,」
「♪」や「★」などで煌びやかにしたい人もいるかもしれませんが、屋号には使えないので、別のものを考えるようにしましょう。

③商標権を侵害してはいけない

商標権を侵害しないように注意しましょう。商標権とは、商品やサービスの名称に与えられている権利で知的財産権の一種です。

日本弁理士会では、商標権をこのように解説しています。

商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、その効力は同一の商標・指定商品等だけでなく、類似する範囲にも及びます。商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等も含まれます。
権利の存続期間は10年ですが、存続期間は申請により更新することができます。

出典:日本弁理士会

商標権が与えられている名称を屋号に使ってはいけません。使ったことが発覚した場合、商標権の侵害として裁判所へ訴えられてしまう場合もあります。

莫大な裁判費用や損害賠償金が発生することもありますので気を付けましょう。商標の調べ方は特許庁にて詳しく解説されていますので、参考にしてください。

④他の人と被らないようにする

他の人と同じ屋号を付けることは禁止はされていませんが、なるべく同じものにならないようにした方が無難です。他の人と同じ屋号になってしまうと、その個人事業主とトラブルになる場合もあります。

屋号を思いついたら、一度Google検索などをして、その屋号で活動している個人事業主がいないか確認しておきましょう。

フリーランスが屋号をつくる時のポイント

ここからは、屋号をつくる時のポイントを3つ紹介します。

フリーランスが屋号を作る時のポイント
①覚えやすい屋号にする
②屋号の由来を説明できるようにする
③なるべく短く簡潔なものにする
1つずつ見ていきましょう。

①覚えやすい屋号にする

屋号を思い浮かべただけで、あなたがどんな人で、何の事業をしているか想像しやすい名前にしましょう。屋号を見てもどんな人で、どんな仕事をしているのか全くわからないようなものだと、覚えてもらいづらくなります。

かっこいいものにしたいという思いを持っている人もいるかもしれませんが、見る相手にとってどんな印象を与えるのかをまず考えて、屋号を付けるようにしましょう。

②屋号の由来を説明できるようにする

屋号の由来を聞かれた時に、説明できるようにしておきましょう。名刺を作成し、屋号を記載していると、どうしてこの屋号にしたのか?と聞かれることは少なくありません。

その際にテキトーに付けたと答えてしまうと、「仕事もテキトーにやっているのではないか?」と相手に悪印象を与えてしまいます。どんなことを考えて、どうしてその屋号にしたのか簡単でもいいので、答えられるようにしておきましょう。

③なるべく短く簡潔なものにする

凝ったものを作ろうして、屋号が長くなってしまう人もいますのが、なるべく短く簡潔なものになるように意識しましょう。あまりに長いと覚えにくいですし、請求書や手続きなどをする時にも毎回書くのが面倒になります。

また電話で屋号名を名乗る時にも言いづらかったり、相手からすると聞き取りづらかったりもします。屋号を決めたら、一度書いてみたり、声に出してみたりして、違和感がないか確認するようにしましょう。

屋号の申請方法

屋号の申請方法

屋号の申請方法を以下の2パターンに分けて解説していきます。

屋号の申請方法
①これから独立する場合
②すでに独立している場合
それぞれ見ていきましょう。

①これから独立する場合

今後独立の予定がある人は、開業届に屋号を書いて居住地を管轄している税務署へ提出します。開業届の提出は窓口へ持っていっても、郵送しても大丈夫です。

提出する前には、必ず控えのコピーを作っておき、自分でも確認できるようにしておきましょう。一度提出してしまうと、変更するのに手間がかかるため、間違いがないように丁寧に記載するようにしてください。

開業届について以下の記事で詳しく解説しています。

②すでに独立している場合

独立後に屋号を付けたい場合は次の確定申告書を提出する際、屋号を書く欄に記入するだけで大丈夫です。たとえば2020年6月に屋号を付けたいと思った時は、2020年分の確定申告書に屋号を書いて提出します。

確定申告まで期間が空いている場合は、開業届に必要事項を記入して税務署へ提出すれば屋号を変更できます。屋号を変更する際には、取引先や金融機関などにも必ず連絡をするようにしましょう。

まとめ

フリーランスが屋号を付けるメリット
①屋号があると覚えてもらいやすい
②屋号で事業用の口座が作れる
③取引先からの信頼度が高くなる
④法人化する時に楽になる

フリーランスは屋号を付けても付けなくても問題はありません。開業してからでも、好きなタイミングで屋号を付けることができるので、開業時に特別必要のない人は屋号を付けなくてもいいかもしれません。

屋号を考えるよりも先に、フリーランスとしてきちんと活動できる基盤を作ることが重要です。フリーランスとして安定的に活動できるようになってから屋号のことを考えるようにしましょう。