・会社員とフリーランスで所得税はどう変わるの?
・会社員とフリーランスで社会保険料はどう違うの?
会社員とフリーランスでは、働く時間や働く場所、仕事の獲得方法など働き方が大きく違ってきます。その中でも、特に理解をしておいた方がいいのが、税金に関してでしょう。
会社員の場合は、税金に関することはほとんど会社がやってくれていたはずです。フリーランスになると、会社がやってくれることはなく、自分で全て行う必要があります。
今回の記事では、会社員とフリーランスで税金はどう違ってくるのか?を解説します。所得税や住民税などの税金だけではなく、社会保険料などの違いについても解説しますので、参考にしてください。
会社員とフリーランスで違ってくる税金とは?
会社員とフリーランスで支払うべき税金はそれほど変わりません。変わってくるのは、「個人事業税」と「消費税」の2つです。
会社員が支払う税金 | フリーランスが支払う税金 |
・所得税 ・住民税 | ・所得税 ・住民税 ・個人事業税 ・消費税 |
それぞれの税金について詳しく見ていきましょう。
所得税
所得税とは、1年間の収入から、経費を引いた所得に対して発生する税金のことです。所得が多い人ほど、支払額が増える「累進課税方式」を導入しています。
所得税額は以下の計算式で求められます。
税率や控除額などは、下記の速算表に則って決まります。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え、330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え、695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え、900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え、18,000万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え、4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁
課税される所得金額が400万円の場合、所得税額は以下のようになります。
課税される所得金額は、会社員とフリーランスとで、計算方法が少し異なってきます。
会社員
会社員の場合は、下記の計算式で課税される所得金額を算出します。
所得金額=給与等の収入金額-給与所得控除額
給与所得控除とは、会社員のみに認められている所得控除です。控除額は年収ごとで異なります。
給与等の収入金額 (給与所得の源泉徴収票の支払金額) | 給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 550,000円 |
1,625,001円から 1,800,000円まで | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001円から 3,600,000円まで | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001円から 6,600,000円まで | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001円から 8,500,000円まで | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁:令和2年分以降
給与所得控除額は年度毎によって変わってきます。
会社員の場合は、基本的に会社が納税してくれるため、自分は何もしなくても大丈夫です。
フリーランス
フリーランスの場合は、下記の計算式で課税される所得金額を算出します。
フリーランスには給与所得がない代わりに、自分で経費を計算することができます。経費とは、事業に関して支払った費用のことです。打ち合わせ時に発生した会議費や飲食代、クライアント先へ移動する時に発生した交通費などがあります。
またフリーランスが所得金額を算出する際は、以下のような控除を適用することも可能です。
- 青色申告特別控除
- 医療費控除
- 雑損控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- etc……
フリーランスの場合は、自分で確定申告をして、所得税額を算出して、納税する必要があります。
住民税
住民税とは、住んでいる自治体に支払う税金のことです。都道府県税と市区町村税を合わせた総称を「住民税」と呼びます。
住民税を算出する計算式は以下のようになります。
所得割とは課税所得に税率を掛けて計算する税額のことで、税率は10%(都道府県民税率+市区町村民税率)が基本です。ただし、自治体の中には10%よりも低い地域もあります。一方均等割とは、所得に関係なく均一に賦課する税率のことで、5,500円(都道府県民税3500円、市区町村民税2000円)の場合が多いです。
会社員とフリーランスによる違いはそれほどなく、所得金額や住んでいる地域によって、住民税が高いか低いかが決まってきます。納税方法は、所得税と同じで、会社員なら会社が、フリーランスは自分で納税する必要があります。
個人事業税
「個人事業税」は、特定の事業を行っている個人に課せられる税金です。会社員にはかからない税金で、特定のフリーランスのみが支払う必要があります。
対象になる事業は70種あり、それぞれで税率は変わってきます。
出典:東京都主税局
とはいえ、この事業にあてはまる人が全員支払わなければいけないわけでありません。事業主控除が290万円あるため、所得がそれ以下の人は支払わなくて大丈夫です。
消費税
フリーランスとして働いていて、売り上げが1,000万円を超えると、消費税を支払う必要があります。所得税や住民税などと違い、所得ではなく、消費税のかかる売上から消費税のかかる仕入れや経費を差し引いた金額に対して消費税がかかります。
ただし、支払いに関しては、2年後になります。忘れていて、支払えないことがないように、資金繰りには注意しておくようにしましょう。
会社員とフリーランスでは税金以外にも保険が違ってくる
会社員とフリーランスで違ってくるのは税金だけではありません、以下の保険も変わってきます。
①健康保険
②年金保険
③雇用保険
④労災保険
①健康保険
健康保険とは、病気や怪我などをしたときに給付をもらえる保険のことです。健康保険にはいくつか種類があり、会社員とフリーランスでは以下のように加入する保険が変わってきます。
会社員 | フリーランス |
健保 | 国民保険 |
具体的にどのような違いがあるか以下で確認していきましょう。
会社員の場合
会社員が加入する健康保険は、「健保」と呼ばれるものです。今もらっている給与を元に保険料が決まり、所得に応じて保険料は上がっていきます。健保は出産手当金や傷病手当金も支給されます。
どれほどの保険料になるかは、都道府県別に変わるため、住んでいる地域で保険料が高い、低いなど分かれてきます。健保の保険料は世帯ごとにかかってくるため、一人当たりの負担料は国民健康保険よりも安いです。
また原則として会社と被保険者で2分の1ずつ折半できるため、個人で負担しなければならない保険料はさらに安くなると言えるでしょう。給料やボーナスから天引きされるため自分で納付する必要もありません。
フリーランスの場合
フリーランスは一般的に、国民健康保険に加入することになります。健保と違い、出産手当金や傷病手当金が支給されません。保険料は、前年の所得を元に決まり、住民税と同じように所得割と均等割で決まります。ただし基礎控除が33万円あるため、住民税と全く同じ金額にはなりません。
国民健康保険は、加入者一人ひとりにかかるため、健保より負担料は高くなりがちです。また個人で全て個人で負担しなければならず、自分で納付する必要があります。
②年金保険
年金保険は、該当項目にあてはまことが起きたときに毎年定期的に一定額を支給してもらえる保険です。年金と聞くと、老後のためのお金というイメージを持たれるかもしれませんが、年金にも種類があり、老後以外のことでも該当項目に当てはまれば、お金を支給してもらえます。
一般的に老後もらえる年会は「老齢年金」と呼ばれており、他にも以下のようなものが年金としてあります。
- 老齢年金
- 障害年金
- 寡婦年金
- etc……
会社員とフリーランスでは、加入する年金保険は以下のように違います。
会社員 | フリーランス |
厚生年金 | 国民年金 |
それぞれ詳しく見ていきましょう。
会社員
会社員が加入する年金保険は、基本的に厚生年金です。厚生年金は、国民年金に上乗せして支給される公的年金です。
保険料は所得に応じて異なりますが、受け取れる給付額も所得と加入期間によって変わってきます。また、原則として会社と被保険者で2分の1ずつ折半できるため、個人で負担しなければならない保険料は安くなります。
受け取れる給付額が多いため、国民年金よりも充実していると言えます。
フリーランス
フリーランスが加入する年金保険は、基本的に国民年金保険です。受け取れる給付額は、所得に関係なく、加入する期間に応じて、一定の金額です。
また保険料も所得に関係なく、年度ごと一律の金額で、全額自己負担になります。フリーランスは、会社員のように国民年金に上乗せされるものが一切ないため、自分で老後に備えておかなければなりません。
私的年金と呼ばれるものや貯金、投資などで、老後の生活資金を用意しておく人が多いです。
③雇用保険
雇用保険とは、仕事がなくなった時に失業給付を受け取るための保険です。条件を満たせば、失業後に一定期間、給付金を受け取れます。また、失業期間中に職業訓練校に通うこともでき、資格やスキルを身に付けることも可能です。
育児や介護などのために一時的に休職する場合の手当も雇用保険から給付されます。基本的には会社員の場合は会社が勝手に加入してくれています。保険料は会社と被保険者の双方が支払う必要がありますが、会社が多く負担してくれ、給料やボーナスから天引きされているはずです。
フリーランスは雇用保険に加入できないため、自分で働けなくなったときのことを考えて、備えをしておく必要があると言えるでしょう。
④労災保険
労災保険とは、仕事中や通勤中の事故などが原因で、病気やケガをした場合に補償してくれる保険です。加入の義務は会社にあるため、自分で手続きをする必要はありません。
また保険料は会社が全額負担してくれるため、給料やボーナスから天引きされることもなく、補償を受けることができます。そのため会社が労働者を守るための保険とも言えるでしょう。
中小事業主や一人親方など一部のフリーランスでも労災保険の加入が認められる「特別加入」という制度があります。しかし全てのフリーランスが加入できる労災保険はまだありません。
フリーランスは確定申告をして所得を報告する義務がある
会社員の場合は、会社が個人の所得を計算して、税金の支払いなどをしてくれますが、フリーランスの場合は自分でしなければいけません。そのため、フリーランスは、自分で確定申告をする必要があります。
ここからはフリーランスが行うべき確定申告の申告方法や納税方法について紹介します。
申告方法
フリーランスの場合は、原則、自身で確定申告をしなければなりません。確定申告は、下記のステップで作業を行います。
1.帳簿を付ける
帳簿とは、発生した売上や経費の金額を記録することです。確定申告には主に以下の2つのやり方があり、帳簿の付け方も変わってきます。
青色申告 | 白色申告 |
複式簿記 (貸借対照表と損益計算書が必要) | 簡易簿記 (売り上げや経費を入力して作成すればOK) |
作成した帳簿は7年間保存し、税務調査があった際には開示する義務があります。帳簿がないと、確定申告で報告した所得額が合っているのかどうか、支払った税金は正しかったかどうかがわからないためです。
破棄してしまうと、脱税の疑いをかけられ、延滞金や罰金を支払わなければならない場合もあるため、必ず保管しておきましょう。
2.確定申告に必要な書類の作成
確定申告に必要な書類は、確定申告を青色申告でするか、白色申告でするかで異なってきます。
青色申告 | 白色申告 |
・確定申告書B ・青色申告決算書 ・確定申告書に添付する各種控除関係の書類(控除を受ける場合) ・源泉徴収票(給与所得などがあった場合) | ・確定申告書B ・収支内訳書 ・確定申告書に添付する各種控除関係の書類(控除を受ける場合) ・源泉徴収票(給与所得などがあった場合) |
作成作業をを簡略化したい時は、会計ソフトで確定申告に必要な書類を作成するのがおすすめです。帳簿のデータを、確定申告書に自動で反映させられるソフトを使えば、入力作業がほとんどなく、効率的に確定申告ができます。
3.確定申告書を最寄りの税務署へ提出する
確定申告書の記入が終わったら、最寄りの税務署へ提出します。確定申告書の提出期間は、毎年2月16日~3月15日です。
提出方法は、直接税務署へ持っていく以外に、郵送やe-taxがあります。郵送の場合は、封筒に必要書類を入れて提出します。消印有効であるため、3月15日に発送しても問題ありません。
「e-tax」とは、インターネット上で確定申告ができるシステムのことです。原則24時間稼働しています。前もって手続きをしなければなりませんが、それさえ完了すれば、インターネット上から確定申告作業ができるためラクです。
パソコンだけではなく、スマホからでも確定申告ができます。e-taxを利用するために必要な手続きは以下の通りです。
2.電証明書の取得
詳しくは、e-tax公式ページで確認してください。
確定申告を自分でするのが面倒なら税理士へ委託しよう
自分で確定申告をするのが手間に感じる人もいるでしょう。その時は、税理士に全ての作業を委託すると良いでしょう。
税理士へ委託できれば、帳簿の作成や確定申告書類の作成をする必要がなく、本業に割く時間を確保できます。また税務調査の際にも税理士に助けてもらえるため、必要以上に心配する必要もなくなります。
それなりに費用は必要になりますが、自分でやるよりもプロに依頼する方がメリットがあると感じる人は検討してみてください。
納税方法
確定申告をして決まった税金は、納付書か口座振替で納付します。支払回数は、税金の種類によって異なります。
・住民税は、一括払い、もしくは3カ月分をまとめて定期的に支払い
・健康保険料は、一括払い、もしくは10~11回に分けての払い
・年金保険料→一括払い、もしくは1カ月ごとの支払い
金額が大きかったり、所得が少なくて支払うのが厳しかったりする時は、自治体や税務署などへ相談すると、減額や免除などを認めてもらえる場合があります。
ただし減額や免除をすると、それだけ受け取れる給付額が減ってしまうため、注意しましょう。
まとめ
・所得税
・住民税フリーランスが支払う税金
・所得税
・住民税
・個人事業税
・消費税
会社員とフリーランスでは、働き方だけではなく、支払うべき税金や保険料が大きく違ってきます。理解せずにフリーランスになってしまうと、「税金が思った以上に高かった」「将来受け取れる給付金が少なくて不安を覚えた」と後悔してしまうことも出てくるでしょう。
フリーランスの場合は、会社でやってくれることがほとんどなく、自分自身でやらなければいけないことが多々あります。税金や保険料についても理解をしっかりと深め、不安のあるところは、自分自身で備えをしていくようにしましょう。