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仕事も子育ても、背伸びしすぎない。フリーランス・採用のプロが語る、疲弊しない働き方の流儀

【記事概要】

今回は5月の掲載ということで、「母の日企画」として母親として子育てをしながら、フリーランスとして活躍する採用のプロフェッショナルに取材。「仕事も家庭も完璧に」と背伸びをしすぎず、自分らしいバランスを模索しながら働くリアルな姿に迫りました。

キャリアと育児の両立に悩む方や、これからの働き方を考えたい方にとって、ヒントとなる内容をお届けします。

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コーヒーへの夢が、採用の道を開いた

コーヒーへの夢が、採用の道を開いた
フリーランスとして活動する栗本 恵理さん(coplus株式会社代表取締役)

アフリカなど生産国支援のために、フェアトレードコーヒーを日本に広めたい。そんな思いを胸に新卒で入社した会社は、当時フェアトレードコーヒーの販売量日本一を誇る企業だった。ところが配属されたのはコーヒー事業部ではなく、人材開発部門。気づけば新卒採用の仕事にどっぷりはまっていた。

「たまたま配属されたのに、採用の仕事が面白かったんですよね。知名度の高くない会社だったこともあり、自分を通していろんな人に会社を知ってもらい、仲間になってもらうのが楽しくて

結婚を機に兵庫から茨城へ移り、採用とは無縁の職場に転じた。職場環境にも恵まれ、楽しくおだやかな日々だったが、どこか物足りなさを感じていた。そんな中、30歳手前で「もう一度ちゃんと働きたい」という思いが再燃する。向かった先は、NPOだった。

NPOで5年、必死に働いた。それが、原点になった

茨城から東京まで片道2時間かけて通勤しながら、新しい環境への挑戦が始まる。そんな中、家族の転勤に伴い横浜へ引っ越し、その後自身もひとつ目のNPOからスピンアウトしたNPOへ移った。そこでは、職員数名から数十名への拡大期のなかで、採用のほか人事、管理業務全般に加え、資金調達なども担った。当時は組織が成長過程だったこともあり、激動の日々を送ったという。

「しんどいことも多かったけど、他では得られないやりがいがあった。志の高い人たちと、社会を良くしようと一緒に働いた経験が、今でも自分の仕事観の土台になっています」

その間に2人の子どもを授かった。1人めのあとは短期間で職場復帰したが、2人めの復帰のタイミングで働き方を見直すことにした。「NPOも今は色々整っていますが、当時は企業に比べると未整備なところもあって。自身の年齢的にも、企業に戻って色々学び直すにはいいタイミングでもあると思ったんです」

一方で、NPOでの経験は栗本さんに一つの確信を与えていた。人材と資金、その両方が慢性的に不足するNPOの課題を、自分が解決できる人間になりたいという思いだ。

「キャリアの逆戻りですよ」と言われても、RPOへ

民間に戻り、採用広報に加え、要員戦略などにも従事した後、栗本さんはRPO(採用業務のアウトソーシング)という領域に関心を持つ。しかしエージェントの反応は冷たかったという。

戦略を練ってきた人間が企業の手足になるRPOに行くなんて、キャリアの逆戻りですよ、と言われました。でも私は企業の手足になんてなるつもりはない。組織のなかに入り込んで中からあらゆる改善を進め、採用力をあげる支援をできるRPOこそが、NPOの人材不足解消を目指す自分に必要な経験だと思っていたんです」

エージェントの言葉を聞き流し、大手人材企業へ。ここでRPOの仕事に就いてみると、RPOの仕事は楽しく、職場メンバーにも恵まれた。職場のみんなに会いたくて、出社しなくていい日でも会社に行くほどだったという。

その充実した日々の中、同僚から独立の誘いを受け、意気投合する。「ゆくゆくは独立してNPOの支援をしたい」という思いが元々あった栗本さんは、タイミングが想定より早かったものの、独立することを決意する。

共同創業の挫折から見えた自分のポリシー

しかし、共同での独立はうまくいかなかった。大型案件の拡大と売上増に主眼を置き、アグレッシブな営業をするパートナーとの違いが明確になっていく。経営として、売上を拡大させていくことも大事だとは理解しつつも、自分が大切にしたいこととの乖離を拭えなかった。何度もぶつかった末に別々の道を歩むことにした。

「どちらかが悪いとか正しいとかでもなく、経営という意味ではパートナーが正しい側面も多いにあり、迷惑もかけたと思います。価値観や考え方の違いの結果ですが、しんどかったですし、自分が会社を抜けたので、全くのゼロになってしまって、まさに人生のどん底を経験しましたね。でも、この経験を経て、自分が大切にしたいことがより明確になったと思っています」

ゼロから再スタートし、現在は企業、NPO、一般社団法人等、様々な組織への支援を行っている。「売上拡大だけのために仕事をしない」「できないことをできると言わない」。それが今の栗本さんの仕事の流儀だという。

ストレスは100から10へ。「背伸びしすぎない」が仕事も子育てもラクにした

独立前の日々のストレスを「100」とすると、今は「10」だという。働く時間は約半分くらいになっている感覚。それでもアウトプット量と質は上がっていると栗本さんは言う。

キャリアや年齢を重ねてきたことも大きく影響していますが、付け加えるなら「背伸びしすぎない」こと。

クライアントへの対応では、自分を良く見せすぎず、期待値調整をしっかりと行う。「ここはしっかり価値提供できます、ここは期待に添えないかもしれません、ということはちゃんと正直に伝える。それが結果的に信頼につながると思っています」

そのスタンスは、子育てでも同じだ。「子育てって、やろうと思えばいくらでもできることがあるじゃないですか。毎日一汁三菜を手作りするとか。自分よりハイスペックな人なら、もっと色々してあげられるんだと思います。でも、あくまで今の自分のなかの精一杯でがんばるということを大切にしています」

子どもには「ママはすぐ忘れちゃうから一緒に覚えておいてね」と伝えている。ある日、翌日の保育園でのお料理体験に向けて、エプロンを自分でリュックに詰める次男の姿があった。次男が「ママは忘れちゃうからね」と一言。こんなママでごめんねと思いつつ、わが子の逞しい成長に感動もした。

自分を整えることも欠かさない。土日の朝6時、子どもが寝ているうちにサウナへ行き、一人で静かに心を整える。「自分がイライラしているな、と気づいたら、なぜなのかを俯瞰して考える。睡眠が足りなかっただけ、ということも多いんですけど(笑)。自分の状態をちゃんと確認し、自分の心も整理することが大切な習慣になっています」

次男の小学校入学も、海外短期留学も柔軟に。

4月、次男が小学校に入学した。「一年生ってすごく早く帰ってくるし、最初は学童の送り迎えもあって。でも案件を調整できたり、忙しさも含め自分でコントロールできる範囲が広いので、比較的スムーズに対処できたと思います」

今年の夏は、子ども2人を連れて1ヶ月ほど海外短期留学へ行く計画を立てている。フルリモートで仕事をする予定だ。「働く場所も含め、自分で比較的自由にやりくりできるのは、ありがたいことだなと思っています。」と笑顔で語る。

子どもへの"唯一の誇り"は、楽しそうに働く背中を見せること

フリーランスの寂しさを聞くと、「自社の忘年会がないこと」と即答して笑った。でも、その分クライアントの一員として深く関わり、複数の組織の一員のように感じられることは今の働き方の魅力だとも言う。

マイナス面を問われて正直に挙げてくれたのは、不安定さ。「外的要因で案件が急に終了することもあったり、不測の事態がすべて自分にのしかかってくる不安定さとは向き合う必要があります。安定を求めるなら正社員になった方が絶対いいですよね。でもそうしないのは自分の選択なので、そこは覚悟と責任をもつようにしています」

それでも、子どもに誇れることが一つあると栗本さんは言う。

「仕事って大変なこともたくさんあるけど、たくさんの人の役に立てて、たくさん「ありがとう」をもらえる、本当にすてきなことだよ、それと、世の中には本当にすてきな人がたくさんいるよ、この2つはちゃんと伝えられているかなと思っています」

NPOの人材不足を解消したい

将来について問うと、答えはシンプルだった。

非営利の人材不足を解消したいんですよ」

10年以上前、NPOに勤めていた頃、アメリカではNPOが「働きたい会社ランキング」の上位に入っていたという。日本にもそんな時代が来ると信じた。でも10年経っても、現実はほとんど変わっていない

「フリーランスもそうだと思うんですけど、この働き方や仕事がどれだけ素敵で楽しいかが、ちゃんと社会に伝わっていない。採用支援をするだけでなく、業界全体の立ち位置を押し上げるようなブランディングとか、仕組みづくりとか、そういうことにも関わっていきたいと思っています」

背伸びはしすぎない。でも自己研鑽は、決して怠らない。AIをはじめ、仕事の質をあげるためのインプットは常に行い、ママ友との会話からも人とのコミュニケーションを学ぶ。そのしなやかさこそが、栗本さんをフリーランスとして、母として、支え続けている。

栗本さんプロフィール:

栗本 恵理

coplus株式会社代表取締役。事業会社およびNPOにて採用や組織開発など人事領域を中心に経験を積み、大手人材会社を経て2023年に独立。共同創業を経験したのち、2025年より現職。社会課題解決に挑む組織への人材流入を促し、社会をより良くしていくことを目指して、企業や非営利セクターへの採用・組織支援を展開している。

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TECHBIZ MEDIA編集部

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