開業届を出す前の収入・支出はどう取り扱えばいい?青色申告する方法も紹介

・開業届を出す前に発生した収入は事業所得に含めるのか
・開業届を出す前にかかった費用は経費として計上できるのか
・開業届を出した年に青色申告はできるのか

フリーランスとして独立する前に副業から収入を得ていた、あるいは開業届を提出するのが遅くなり、その間に収入を得ていた方もいるかもしれません。開業届を提出する前の収入の取り扱いについて理解しておくことは重要で、そうしないと確定申告の際に問題が生じる可能性があります。
今回は、開業届を提出する前に得た収入が独立後どのように取り扱われるかについて詳しく説明します。また、開業届提出前の収入を青色申告する方法についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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開業届前の収入は事業所得として扱っても良いのか

開業届を提出する前の収入は、基本的に事業所得として扱うことが可能です。例えば、4月1日に開業届を提出し、その年の1月から3月までに10万円の収入があった場合、その収入は事業所得として扱うことができます。
さらに、売上だけでなく、必要な経費も計上することができます。ただし、開業届を提出する前の収入が一時的なものであったり、事業とは無関係な収入であった場合、それを事業所得として扱うことはできません。
そのような場合には、一時所得や雑所得として扱うことをお勧めします。

事業所得とは?

国税庁では事業所得を以下のように定義しています。

事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。
出典:国税庁

また事業所得として認められるための要件としては以下のようなものが挙げられます。

・継続的に一定の収入があるか
・客観的に見て事業として成立しているか
・営利目的で行っているか etc…

事業所得には「青色申告特別控除」や「損益通算」などの制度を利用することが可能で、これらは節税に繋がる可能性があります。そのため、開業前に得た収入も、可能な限り事業所得として扱うことが望ましいと言えます。これにより、税金の負担を軽減できる可能性があります。

雑所得や一時所得とは?

雑所得は以下のように定義されています。

雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得及び一時所得のいずれにも当たらない所得をいい、例えば、公的年金等、非営業用貸金の利子、副業に係る所得(原稿料やシェアリングエコノミーに係る所得など)が該当します。
出典:国税庁

ここには書かれていませんが、「副業でライター業をやって執筆料を得た」「手作りの物を販売した」などの場合も雑所得として扱われることがあります。
また一時所得は以下のように定義されています。

一時所得とは、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得をいいます。この所得には、次のようなものがあります。
(1) 懸賞や福引きの賞金品(業務に関して受けるものを除きます)。
(2) 競馬や競輪の払戻金(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます)。
(3) 生命保険の一時金(業務に関して受けるものを除きます)や損害保険の満期返戻金等。
(4) 法人から贈与された金品(業務に関して受けるもの、継続的に受けるものを除きます)。
(5) 遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金等
出典:国税庁

事業所得ではない場合は、開業届などの提出は必要ありません。ただし年間20万円以上の雑所得がある場合は、確定申告は必要になりますので、注意しましょう。

開業届は出さなくても罰則はない

開業届は提出しなければならないものではありますが、出さなくても特に罰則はありません。そのため、提出を忘れていたり、提出が遅れてしまっても大きな問題には繋がらないと言えるでしょう。
ただし開業届を出さないと以下のようなデメリットがあります。

・青色申告特別控除が受けられない
・屋号付きの銀行口座が作れない
・小規模企業共済
事業所得であっても、青色申告特別控除を受けるには、開業届と青色申告承認申請書を所轄の税務署へ提出する必要があります。開業届は開業日から1ヶ月以内に、青色申告承認申請書は開業日から2ヶ月以内に提出することが決められています。
開業届については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

開業日前の収入は、開業日に合わせて計上するのが基本

開業日前に得た収入は、基本的には開業日に計上します。例えば、4月1日に開業し、開業前に15万円の収入があった場合、その収入は4月1日付で売上として15万円計上します。開業日以前の日付で収入を計上することは、ほとんどありませんので、この点は覚えておいてください。

開業届前に発生した収入を青色申告で申請できるかは状況による

開業届前に発生した収入を青色申告で申請できるかは、ケースバイケースです。開業届前に発生した収入を青色申告で申請するためのポイントは以下の3つです。

開業届前に発生した収入を青色申告で申請するためのポイント
①税務署に事前に相談する
②開業届と青色申告承認申請書をできる限り早く提出する
③開業届を出す前の請求書などは保管をしておく

ここでは、青色申告のための3つのポイントを紹介しながら解説します。

ポイント1.税務署に事前に相談する

開業届を提出する前の収入の取り扱いについては、税務署に事前に相談することをお勧めします。青色申告を行うためには、開業届を提出する前の収入も事業所得として税務署に認めてもらう必要があります。
そのため、自己判断に頼るのではなく、税務署に問い合わせることが確実です。税務署に相談に行く際には、なぜ開業届を提出する前に収入があったのかを具体的に説明できるように準備しておきましょう。「収入が少なく、事業とは言えないと思った」「継続的に収入を得る見込みがなかった」などの理由があれば、問題ないと考えられます。
また、発生した経費についても同様に相談しておくと、より安心できるでしょう。

ポイント2.開業届と青色申告承認申請書をできる限り早く提出する

開業届と青色申告承認申請書は、早めに提出することが推奨されています。これは、開業届を提出した日から確定申告までの期間の長さが、青色申告が可能かどうかに影響を与えるためです。例えば、確定申告までの期間が長い場合、開業届前の収入が青色申告の対象になる可能性が高まります。逆に、確定申告までの期間が短い場合は、青色申告の対象にならない可能性が高くなります。
例を挙げながら見てみましょう。

パターン1:青色申告として認められやすいパターン
3/1に開業届の提出&青色申告の申請をした
1/1~2/28の段階で、収入が30万円あった
3/1~12/31の間で事業収入として150万円発生した

この場合、開業届を提出した後に事業収入がある程度発生しています。税務署から事業を営んでいると認めてもらえる確率が高いため、青色申告の対象になる可能性も高いです。

パターン2:青色申告として認められにくいパターン
12/1に開業届の提出&青色申告の申請をした
10/1~11/30の段階で、収入が30万円あった
12/1~12/31の間で事業収入として5万円発生した

開業届を提出した後の収入が少なく、開業届前の収入が多い場合でも、開業届を提出してから確定申告を行うまでの期間が短いと、事業を営んでいると認められる確率は低くなります。そのため、開業届前の収入を青色申告の対象に含めるのは難しい場合があります。

また、確定申告までの期間が長くても、開業届前の収入が事業と全く関係ない内容だった場合は、その収入が事業に付随する収入として認められない可能性が高いため、青色申告の対象にするのは難しいでしょう。

したがって、収入がある程度発生している場合は、早めに開業届を出すことをお勧めします。これにより、開業届前の収入が青色申告の対象となる可能性が高まります。

ポイント3.開業届を出す前の請求書は保管しておく

開業届を出す前の請求書は保管しておくようにしましょう。青色申告対象者は、請求書を5年間保管することが義務付けられているためです。

その他にも、以下のようなものは保存する義務があります。

・帳簿
・領収書
・注文書
・契約書 etc…

以上の書類も5~7年間の保管が必要ですので、捨ててしまわないように気をつけましょう。フリーランスの青色申告の仕方については以下で詳しく解説していますので、参考にしてください。

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わからないことは税務署員または税理士に相談しましょう

事業前収入について不明な点がある場合、まずは税務署員に相談することをお勧めします。税務署員は税法に詳しく、最終的な判断を下す立場にありますので、適切なアドバイスを得ることができます。

しかし、税務署に直接相談するのが難しい場合や、より専門的なアドバイスが必要な場合は、税理士に相談することも一つの選択肢です。税理士は税法の専門家であり、個々の事情に合わせたアドバイスを提供することができます。

税理士に相談する際には、以下の3つの点に注意してください。

税理士へ相談する上で気をつけるべき3つのこと
①個人事業主の開業について詳しいか

②丁寧な対応をしてくれるか
③予算はどれくらいかかるか
それぞれ詳しく見ていきましょう。

①個人事業主の開業について詳しいか

全ての税理士が、個人事業主の開業について詳しいわけではありません。税理士ごとで得意ジャンルが違うため、開業時のルールを知っている税理士を選んでください。

公式サイトの情報を参考にしたり、知人からの口コミなどを頼ったりしながら選ぶと良いでしょう。

②丁寧な対応をしてくれるか

難しい専門用語を並べて単に説明するのではなく、専門知識がない人にも、分かりやすく丁寧な言葉で説明してくれる税理士を選びましょう。会話の中に横文字が並んでいるからといって、その税理士のレベルが高いとは限りません。

本当に頼れる税理士というのは、知識があまりない相談者が来ても、分かりやすく説明できる人です。税理士の話を聞いて、分からないことが多かった時は、別の税理士に変えた方が良いでしょう。

③予算はどれくらいかかるか

無料で相談できるケースもあれば、1回の相談で数千円~数万円発生するケースもあります。ご自身の予算に合わせて、相談する相手を選ぶことが大事です。

また、場合によっては確定申告の手続きを全て任せることができる税理士さんもいます。今後のことも見据えて、どれくらいの予算でどこまでの範囲の業務を依頼できるか聞いておくと良いでしょう。

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まとめ

開業届前の収入について
①開業届前の収入を事業所得として扱うことは可能
②事前に税務署に事業所得として扱ってもいいかどうかは確認しておく
③開業届と一緒に青色申告承認申請書も提出しておく

開業届前の収入は事業所得として扱うことはできますが、全員ができるわけではありません。事前に事業所得として扱えるかどうか税務署に確認しておくようにしましょう。

また事業所得として扱えても、青色申告をするには、青色申告承認申請書を提出しておく必要があります。青色申告にした方が受けられる控除が増え、節税になりますので、なるべく受けれるように準備するようにしましょう。

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