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繋がらない権利とは?海外の制度動向と日本企業の現状

繋がらない権利の定義
繋がらない権利とは、勤務時間外に業務上の連絡や対応を強制されない権利を指します。従業員の心身の健康確保や、ワークライフバランスの維持を目的として議論されてきた概念です。
従来、労働時間は出退勤やオフィスへの物理的な出社によって一定の区切りが存在していました。
しかし、リモートワークやチャットツールの普及により、時間や場所にとらわれない働き方が広がった結果、勤務時間外でも業務対応が可能かつ期待されやすい環境が生まれています。
国際労働機関(International Labour Organization)の調査「Teleworking arrangements during the COVID-19 crisis and beyond」によると、テレワークを行う労働者はオフィス勤務者と比べて長時間労働になりやすい傾向や、勤務時間外に働くケースが増える傾向が報告されています。
このような背景から、「実質的な長時間労働」や「常時接続状態」を防ぐ考え方として、繋がらない権利が注目されています。
海外における制度化の動き
繋がらない権利(Right to Disconnect)は、いくつかの国において、すでに制度として整備が進んでいます。
たとえばフランスでは2017年に労働法が改正され、従業員50人以上の企業に対して勤務時間外の連絡ルールを労使で協議・整備することが義務付けられました。これは「時間外連絡を完全禁止する法律」ではなく、「企業にルール設計を義務づける法律」です。
また、ベルギー、オーストラリア、ポルトガル等の他国においても同様に、繋がらない権利の法制化が進んでいます。
日本における現状と課題
日本では、繋がらない権利は現時点(*2026年4月8日)において、法制度としては整備されていません。しかし、同様の課題は顕在化しています。
厚生労働省の令和5年「労働安全衛生調査」の個人調査結果では、「仕事の量」は主要なストレス要因の一つとして上位に挙げられており、労働時間の長さとも関連する負担要因とされています。
また、日本企業においては、
- 即時返信を前提としたコミュニケーション慣行
- 業務範囲が不明確で、誰かが対応せざるを得ない
- 上司・顧客からの時間外連絡への心理的な応答圧力
といった要素が重なり、組織文化や業務分担のあり方が影響する構造になっている点も特徴です。
人手不足や業務の属人化により、結果として「繋がらざるを得ない状態」が生まれている企業もあります。
繋がらない権利を実現するためには?ルール設計と運用ポイントを解説

勤務時間外の連絡ルールの設計
繋がらない権利を実効性のあるものにするためには、まず勤務時間外の連絡ルールを明確に定義することが不可欠です。
・勤務時間外の連絡は原則として行わない
・緊急時の定義を明文化する(例:システム障害、顧客トラブルなど)
・緊急時の連絡手段を限定する(例:電話のみ許可、チャットは使用しない)
ここでは、「例外」を明確にすることもポイント。
何が“緊急”に該当するのかが定義されていない場合、ルールが主観的な解釈により拡大されます。
また、ルールは策定するだけでは機能しません。特に管理職層が時間外に連絡を行うと、それが暗黙の基準となり、組織全体に波及します。
ルールの実効性は、制度ではなくマネジメントの行動によって担保される点を押さえる必要があります。
業務範囲の明確化
多くの企業で見落とされがちなのが、業務範囲や責任の所在の曖昧さ。
不明確な状態では、「対応できる人」へ皺寄せがいく構造が生まれます。
繋がらない権利を守るためには、単に連絡を制限するのではなく、業務の分担・責任・対応範囲を構造的に整理することが不可欠です。
具体的には、
- 業務ごとの担当者と代替要員の明確化
- 緊急対応のフロー整備
- 引き継ぎ・情報共有の仕組み化
といった設計が求められます。
社内制度を機能させるための運用ポイント
ルールを実効性のある制度として機能させるためには、以下の3点が重要です。
① ガイドラインの策定と全社周知
ルールの目的や背景を含めて明文化し、単なる制約ではなく「組織としての方針」として浸透させる必要があります。
② 評価制度との整合性
時間外対応や即時返信が評価される状態が企業文化である場合、評価指標から切り離すことが重要です。
③ 現場マネジメントの徹底
最も影響力が大きいのは管理職の行動です。ルール遵守を前提としたマネジメントが行われているかをチェックしましょう。
人事歴20年の専門家が、実際の現場での制度設計・運用において設計・導入してきた連絡ルールの具体例として、以下のようなものがあります。
これらの施策により、時間外対応の抑制や現場の運用負荷の軽減といった効果が確認されています。
- 緊急時を除き、定時以降の社内チャットには当日中の返信を求めない
- 社内チャットツールの通知オフを推奨する
- 夜間・休日の緊急連絡は特定手段(電話など)に限定する
繋がらない権利が機能しない企業の失敗事例3つ

①上司がルールを守らず、制度が形骸化
繋がらない権利を制度として導入しても、現場で機能しない企業は少なくありません。その代表例が、管理職がルールを守らないケースです。
たとえば、勤務時間外の連絡禁止を定めているのにも関わらず、上司が勤務時間外にチャットを送り、「返信しないと評価に影響するのではないか」と感じた部下が結果として対応してしまう、といった現場がありました。
この背景には、ルールがあくまで“推奨”や“ガイドライン”にとどまり、遵守しなくても明確な不利益がないことがあります。
また、管理職自身の労働時間が適切に管理されていないケースも多く、結果として行動が変わりません。
②業務量が変わらず、現場にしわ寄せがいく
制度だけを導入し、業務量や人員体制を見直していない場合も、繋がらない権利は機能しません。
たとえば、業務量は従来のままで人手不足も解消されていない、といった状態では、勤務時間内に業務が終わらず、見えない時間外労働が発生します。
表向きは「時間外の連絡はしていない」状態であっても、実際には、
- 自主的に業務を持ち帰る
- 指示されていなくても対応せざるを得ない
といった状況が生まれます。
このように、ルールだけが存在し、実態が伴わない状態は、従業員の不信感やエンゲージメント低下、さらには離職リスクの増加につながります。
③「制度」で解決しようとすること自体が限界となるケース
これらの事例から分かる通り、繋がらない権利はルール整備だけでは実現できません。
機能しない企業に共通しているのは、以下のような構造的な課題です。
- 業務量と人手のバランスが取れていない
- 業務範囲や責任の所在が曖昧である
- マネジメント層の意識・行動が変わっていない
つまり問題の本質は、「連絡をする・しない」という表面上のルールではなく、業務の設計や組織運営の構造そのものにあります。
繋がらない権利を実現するために必要な視点とは?

繋がらない権利を実現するためには、ルール整備にとどまらず、業務そのものの設計を見直す視点が不可欠です。
これまで見てきた通り、制度だけでは現場は変わりません。重要なのは、「なぜ時間外対応が発生しているのか?」という構造に目を向けることです。
業務過多が“繋がらざるを得ない”状態を生む
そもそも、勤務時間外の連絡や対応は、なぜ発生するのでしょうか。
その多くは、個人の意識ではなく業務構造の問題に起因しています。具体的には、以下のような要因が挙げられます。
- 慢性的な人手不足
- 業務の属人化(特定の個人に依存している状態)
- 非効率な業務フロー
この構造を解消するためには、業務の棚卸しと分業の再設計が不可欠です。
特に重要なのは、業務を「コア業務(本来、社員が担うべき業務)」と「ノンコア業務(外部に委託可能な業務)」に切り分けることです。
たとえば、採用業務やバックオフィス業務には、「オペレーション中心の業務」「専門性は高いが常時対応が不要な業務」も多く含まれており、必ずしもすべてを年中社内で担う必要はありません。
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フリーランス活用による現実的な解決策
こうした課題に対して、有効な選択肢となるのがフリーランス人材の活用です。フリーランスを活用することで、
- 必要な業務だけを切り出して依頼できる
- 採用を伴わずに即戦力人材を確保できる
- 業務負担を分散し、勤務時間内に収めやすくなる
といったメリットがあります。
特に、人事・採用領域は専門性が高く、かつ業務の繁閑差も大きいため、フリーランス人材との相性が良い領域です。
一部の業務を切り出すだけでも現場の負荷は大きく軽減され、時間外対応の必要性も低下します。
まとめ|繋がらない権利を守るために企業が取り組むべきは

これまで見てきた通り、制度を整備しても機能しない企業に共通しているのは、業務構造やマネジメントのあり方が変わっていないこと。
繋がらない権利を実現するために本当に必要なのは、「繋がらないようにすること」ではなく、「繋がらなくても回る状態をつくること」です。
そのためには、業務設計の見直しが不可欠です。特に、採用や人事、バックオフィス業務においては、すべてを内製で抱える必要はありません。
「ルールを作ったが現場が変わらない」「時間外対応を減らしたいが、業務が回らない」といった課題を感じている場合は、制度ではなく業務設計そのものを見直すタイミングかもしれません。
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