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「育休は迷惑」と言われる現場で起きている課題3つと、その対策
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課題① 現場メンバーへの「しわ寄せ」「つらさ」が放置されている
多くの企業では、育休に伴う「しわ寄せ」が起きると、「人員不足だから」「忙しい部署だから」と片付けてしまいます。
しかし、問題の本質は業務の属人性にあります。誰かが不在になったときに引き継ぎがうまくいっていないのは、業務設計に組織全体の効率性がないということです。
■ 現場で起きること
- 社員が育休に入ると、その人の業務がそのまま同僚に降りかかる
- 「その人でなければできない業務」のせいで、引き継ぎ事項がブラックボックス化
- 業務のプロセスや責任が明確でないため、対応が後手になる
■ なぜ難しいのか
- 業務の属人性が見える化されていない
- 「忙しいのは当たり前」という文化が定着している
- 組織全体の効率化を後回しにしてきた
■ 対策:業務の見える化から始める
- 育休予定者の業務リストアップを実施
- 業務量の測定と優先度の整理
- スキル配置の検討と配置案の作成
- デジタルツール(プロジェクト管理アプリなど)で、業務状況を一覧化する
課題② 「同僚への迷惑」という心理的負担
育休に伴う課題で最も深刻なのは、実は数字には表れない心理的なものです。
業務の負担もさることながら、「自分のせいで同僚にしわ寄せがいった」という罪悪感と、フォロー側の無言のプレッシャーが、組織全体の人間関係を悪化させています。
この心理的負担が解消されないまま、復帰後も組織の雰囲気が冷え込むケースが少なくありません。
■ 現場で起きること
- 育休取得者は「フォローしてくれた同僚に申し訳ない」という罪悪感を抱える
- フォロー側は「代わりに頑張ってね」という無言の期待を感じとる
- 復帰後も「迷惑な人」というレッテルが残る
- フォロー側は「フォロー側も大変なことを理解してほしい」と心理的に離反する
■ なぜ難しいのか
- 育休制度が「ある」という段階に止まっており、「当たり前」になる基盤がない
- 人事評価が「個人の頑張り」を過度に褒める傾向がある
- フォロー側への負担が正当化されている
■ 対策:心理的土台を作る
- フォロー業務に対する「手当」を明確にする
- 人事評価において「組織への貢献」として位置づける
- 管理職向けの研修で、育休時の職場マネジメントを学ぶ
- 全社コミュニケーションで「育休は権利」を繰り返し発信する
課題③ 育休取得者の復帰後のハードルを過小評価している
育休を取得した社員が職場に戻ってくるとき、人事は往々にして「復帰おめでとう」で終わりにしてしまいます。
しかし復帰の瞬間こそ、最も心理的な負担が大きい時期です。組織や業務の変化へのキャッチアップに加え、「できなくなっていないだろうか」「これからうまくやれるだろうか」という不安が、パフォーマンスに大きく影響します。
■ 現場で起きること
- 育休明けの社員は「迷惑をかけた同僚にどう接しようか」と心理的ハードルを感じる
- 育休期間中に組織・業務が変わっており、パフォーマンス低下を感じる
- 復帰直後が最も心理的な負担が大きい時期にもかかわらず、支援体制がない
■ なぜ難しいのか
- 育休取得と復帰が別の課題として扱われている
- 「段階的に仕事量を増やす」という発想が組織に根付いていない
- 人事が復帰プランの重要性を認識していない
■ 対策:復帰を「新しい配置」と同じ重要度で考える
- 復帰1ヶ月前から本人・管理職で「復帰後の業務配置」を話し合う
- 段階的な業務量の増加プランを立てる
- サポート体制をドキュメント化する
- 復帰後1~3ヶ月は定期的な面談を実施し、心理的不安を確認する
人事歴20年以上の筆者による、育休を“迷惑”にしないための取り組み事例2つ

事例① 育休〜復帰・離職などに関するデータで経営陣を納得させる
まず、育休に関連するデータを集約することから始めました。具体的には、過去3年間の取得率、復帰率、復帰後1年以内の離職率、そしてフォロー側の社員満足度調査を整理します。
例えば、ある小売企業では、育休取得率は78%ですが、復帰後1年以内の離職率が32%だったことが判明しました。
同業他社の平均が12%だったため、経営陣が「育休対応の質」に問題があることを認識できたのです。
■ その後の取り組みと成果
経営陣の合意を得た後、業務プロセスの見える化、管理職研修、代替要員の確保、全社コミュニケーション、復帰支援プログラムの5つの施策を12ヶ月間で実装しました。
その結果、復帰後1年以内の離職率は32%から9%に低下し、フォロー側の月間残業も22時間から9時間に削減。採用応募数も20%増加し、「育休対応=組織開発」という認識が経営層に根付いたのです。
事例② 育休制度を改善して採用ブランディングに寄与
「育休制度が充実している」というブランドは、採用市場で大きな差別化要因になります。
あるIT企業では、育休取得率を50%から85%に高めたことで、新卒採用時の応募数が前年比40%増加し、採用単価が大幅に低下しました。
また、育休取得者の復帰定着率が向上することで、採用・育成にかかる人件費も削減されるのです。
こうした「投資」としての観点を経営陣に示すことが、本質的な改善につながります。
まとめ|筆者後記
20年以上の人事キャリアの中で、多くの企業が「育休は制度として整えた」と考えてきました。しかし現場を歩けば、取得を躊躇う社員、疲弊するフォロー側の姿が何度も目に入ります。
「育休は迷惑」「しわ寄せがつらい」という現場の声は、単なる悲鳴ではなく、組織設計の課題を教えてくれています。それを人事だけで抱え込むのではなく、経営層も巻き込んで、データに基づき、成果で示しながら、丁寧に捉え直すタイミングなのです。
その過程で、人事は組織開発の真の専門家へと成長していく。育休対応は、そうした貴重な機会なのです。
HRBIZでは、育休をはじめとした制度の設計や運用、現場の業務棚卸しなどのご相談も承っております。お気軽にお問い合わせください。








