・フリーランスにも社会保険はあるのか
・フリーランスと会社員の社会保険の違いは
・支払額はいくらか
フリーランスに転身した後の社会保険について気になる方も多いかと思います。フリーランスとして働く場合、社会保険の支払いは自己負担となります。そのため、社会保険の基本的な仕組みを理解しておくことが重要です。
今回は、社会保険の基本情報について説明し、従業員との違いや支払い額の計算方法などをご紹介します。
そもそも社会保険とは何か?
社会保険とは、いくつかの保険が組み合わさって構成される公的な社会保障制度を指します。これは税金によって支えられている制度で、基本的に全ての国民が加入することが義務づけられています。
なお、会社員が加入する社会保険には、4つの種類が存在します。
医療保険
医療保険は、病気や怪我の際に利用する保険で、加入者は基本的に「健康保険料」を支払う必要があります。
加入者には「健康保険証」が発行され、これを医療機関で提示することで、通常の診察料の3割で受診することが可能となります(自由診療を除く)。つまり、通常の診察料が1万円であれば、3,000円で受診できるというわけです。
また、高額療養費制度も利用可能です。
高額療養費制度とは、医療機関(薬局を含む)で支払った1ヶ月間(毎月1日~末日)の医療費が、指定された自己負担額を超えた場合に、後日補填される制度のことを指します。
この制度は、入院や手術などで大きな医療費が発生した際に役立ちます(ただし、自由診療など一部対象外のものがあります)。
なお、自己負担額の上限は、収入によって異なります。
出典:日本年金機構
仮に、区分エに該当する人が、1カ月間で10万円の医療費を負担した場合は、5万7,600円を超えた分の金額です。
つまり、4万2,400円が支給されます。
介護保険
介護保険は、介護サービスを受けるための保険です。
この保険は40歳以上の人が加入する必要があり、介護保険料の支払いが求められます。65歳以上の人を第1号被保険者、40~64歳の人を第2号被保険者と称します。
加入者は、要支援または要介護の認定を受けた際に介護サービスを利用することができます。ただし、被保険者の区分によって、介護サービスの利用条件や保険料の支払い方法などが異なるので、注意が必要です。
年金保険
年金保険とは、60歳以降に年金を受け取るために必要な保険を指します。会社員として働いている場合、「厚生年金保険料」の支払いが必要となります。
厚生年金保険料の支払額は、給料が増えるにつれて増加します。しかし、その一方で年金の受給額も給料が高い人ほど多くなるというメリットがあります。
労働保険
労働保険とは、労働に関連した事故が発生した際に補償を受けられる保険のことで、「労災保険」と「雇用保険」の2つから構成されています。
労災保険は、仕事中や通勤中に事故や怪我をした際に補償を受けられる制度を指します。一方、雇用保険は、失業したり働けなくなったりした場合に、失業給付の支給や職業訓練校の利用などが可能な制度を指します。労災保険の費用は全額事業主が負担しますが、雇用保険には従業員の負担が含まれます。なお、会社員の場合、社会保険料の一部は会社が負担してくれます。
会社員とフリーランスが加入できる社会保険の内容は異なる
フリーランスも、社会保険(社会保障)に加入できます。
しかしフリーランスが加入できる保険は、3つに減ります。
- 医療保険
- 介護保険(40歳以降、健康保険料と一緒に支払う)
- 年金保険
- 残念ながら、労働保険に加入することはできません(仕事内容によっては、労災保険のみ加入が認められている)。
つまり表にすると、このような形です。
会社員 | フリーランス(個人事業主) | |
医療保険 | 〇 | 〇 |
介護保険(40歳以上) | 〇 | 〇 |
年金保険 | 〇 | 〇 |
労働保険 | 〇 | ×(特例アリ) |
会社員がフリーランスへ転身する時は社会保険の加入手続きが必要
フリーランスへ転身したら、改めて社会保険の加入手続きをしなければなりません。
なぜなら退職してフリーランスへ転身した場合、社会保険の種類が、下記のように変わるからです。
医療保険
健康保険組合の保険→国民健康保険
年金保険
厚生年金→国民年金
退職後、役所での手続きが必要となるため、覚えておきましょう。
フリーランスの社会保険の計算方法
社会保険の計算方法も、会社員とフリーランスでは異なります。ここでは、フリーランスの社会保険の計算方法を紹介します。
国民健康保険
国民健康保険料の計算方法は、こちらです。
医療分(所得割と均等割と平等割を足した金額)+支援分(所得割と均等割と平等割を足した金額)+介護分(所得割と均等割と平等割を足した金額)=1年間の健康保険料
所得割・均等割・平等割の概要は、下記の通りです。
所得割
所得によって決まる税額。高所得者ほど税額が増える。
前年の所得から基礎控除を引いて、自治体が指定した税率をかけて算出する。
基礎控除は確定申告時の金額とは異なる。
均等割
1世帯に住んでいる国民健康保険加入者数によって、決まる税額。加入者数が多いほど税額が増える。
自治体が指定した金額に1世帯あたりの国民健康保険加入者数をかけて、算出する。
なお介護保険の場合は、国民健康保険加入者数ではなく、介護保険第2号に該当している人数をかける。
平等割
1世帯あたりに賦課される税額。
自治体が指定した金額に世帯数をかけて、算出する。
実際に数字を当てはめて、見てみましょう。
例.
所得額が100万円
基礎控除が33万円
所得割の税率が医療分「8.5%」、支援分「2.5%」、介護分「2.1%」
均等割の金額が加入者1人につき、医療分2万7,000円、支援分1万円、介護分7,000円
平等割の金額が1世帯につき、医療分2万5,000円、支援分7,000円、介護分6,000円
1世帯の人数、介護保険第2号の人数が、ともに1人だった時の国民健康保険料医療分:(100万円-33万円)×8.5%+2万7,000円×1人+2万5,000円×1世帯=10万8,950円
支援分:(100万円-33万円)×2.5%+1万円×1人+7,000円×1世帯=3万3,750円
介護分:(100万円-33万円)×2.1%+7,000円×1人+6,000円×1世帯=2万7,070円
よって年間の国民健康保険料は16万9,770円です。
なお40歳未満であれば、介護分の負担がないため、年間の国民健康保険料は14万2,700円となります。
国民年金
国民年金保険料の支払額は、所得に関係なく一律です。年度ごとで、月々の支払額は変わります。ちなみに2019年度の負担額は、毎月1万6,410円です(参考:国民年金機構)。
退職したばかりであれば会社の保険の任意継続に加入可能?
任意継続とは会社員時代に所属していた組合の保険に、退職後も最大2年間加入できる制度のことです。保険料は退職時の給料で決まり、支払額は固定されます(例外あり)。
ただし会社の保険組合ごとで加入条件が異なるため、調べてから任意継続を利用してください。
社会保険加入に際して覚えた方が良いこと
ここでは、フリーランスが社会保険加入に際して覚えるべき内容を3つ紹介します。
夫婦の場合はパートナーの所得に応じて社会保険料が変わる
夫婦の場合、それぞれの所得によって社会保険料が変動します。これは、扶養の有無によって社会保険料の支払額が変わるためです。
一般的に、扶養者となれば社会保険料の負担は必要ありません。しかし、扶養者でなければ社会保険料の支払いが必要となります。そのため、社会保険料は変動するのです。
社会保険料が減額される場合がある
扶養者でなくても、社会保険料が減額されるケースが存在します。国民健康保険と国民年金では条件が異なるので、それぞれ見ていきましょう。
国民健康保険の減額
国民健康保険では、所得や世帯数の条件に該当すれば、「2割・5割・7割」のいずれかの減額が適用されます。
国民年金の減額
国民年金では、条件に該当すれば、以下の5つの減額制度を利用することができます。
全額免除
4分の3免除
半額免除
4分の1免除
納付猶予制度
ただし、支払額が減ると年金受給額も減るため、減額制度を利用する際は慎重な判断が必要です。
また、年金の減額制度について詳しく説明されている記事もありますので、ぜひご覧ください。
会社員の時と負担率が異なる
会社員の場合、社会保険料の一部は企業が負担してくれます。
しかし、フリーランスの場合は基本的に全額自己負担となります。
そのため、フリーランスに転身する前に、社会保険料の額を予測してから独立することをお勧めします。
社会保険だけで不安な場合
社会保険の加入だけでは不安を感じる場合、民間の生命保険に加入する選択肢もあります。
保険の代表的な種類は以下のとおりです。
がん保険
入院・通院保険
個人年金
保険料の一部は生命保険料控除として計上できるため、所得税や住民税の節税にも寄与します。
まとめ
フリーランスの社会保険を中心に紹介しました。
まとめると、このようになります。
✓フリーランスが加入できる社会保険
①医療保険
②介護保険(40歳以降)
③年金保険
✓社会保険加入に際して覚えておいた方が良いこと
①夫婦の場合はパートナーの所得に応じて社会保険料が変わる
②社会保険料が減額される場合がある
③会社員の時と負担率が異なる
フリーランスへ転身した人の中には、社会保険料の支払額が多く、資金繰りに苦労する人もいます。
そうならないためにも、フリーランスの社会保険制度を理解してから独立しましょう。
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