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異動させられる人の特徴5つ

人事として20年以上、さまざまな異動に立ち会ってきました。その中で感じるのは、異動の打診を受けた本人と、異動を決めた人事・経営側とで、「その人の価値」の捉え方が食い違うケースが少なくないということです。
異動は本人のキャリア希望だけでなく、会社のニーズも踏まえて決まるためです。経営戦略上、急いで人材が必要な場面では、本人の準備が整う前に配置が決まることもあります。そうなると本人は、「評価されての異動なのか、そうでないのか」が分からないまま、新しい環境でスタートを切ることになります。
ここでは、筆者がこれまで多く見てきた、異動の打診を受けやすい人のパターンを5つ紹介します。
① 組織の変化に敏感な人
売上の変化の兆し、組織編成の動きなどにいち早く気付ける人は、人事や経営側からも注目されやすい傾向があります。
② スキルの幅が広い人
営業も企画もこなせるような人には、複数の部署から「来てほしい」と声がかかりやすく、配置が変わるきっかけになります。
③ 業務を属人化させていない人
仕事を仕組み化・共有できていて、本人が抜けても業務が回る状態をつくれている人は、組織としても送り出しやすい存在です。
④ 上司との相性がかみ合っていない人
今の上司のもとでは本人の強みが活かしきれていない、と判断されることがあります。その評価が人事に伝わり、「別の部署のほうが力を発揮できるのでは」と配置を見直すケースも見てきました。
⑤ キャリアの節目にいる人
昇進のタイミングや、今の部署での成長が頭打ちになっていると判断されたときに、「次のステップ」として異動が検討されることがあります。
このように、異動の背景はさまざまです。期待をかけられての異動もあれば、今の環境では力を発揮しきれていないことを受けての異動もあります。多くの場合、会社は「その人がどこで活躍できるか」を考えて配置を決めています。
ただ、その意図が本人に十分伝わっていないケースも少なくありません。異動の理由や、経営戦略の中での位置付けについて説明がないまま辞令だけが出ると、本人は前向きに受け止めにくく、会社への不信感につながりやすくなります。
こうしたケースを振り返ると、異動がうまくいかない原因は、判断の中身そのものよりも、その判断がどう伝えられたかにあることが多いと感じています。
人事異動のからくりとは?
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人事異動のからくりと、異動の3つの目的
人事異動には、大きく分けて3つの目的があります。
1つ目は「経営戦略の実行」です。新規事業の立ち上げや組織の再編成など、会社の方針を実現するための異動で、多くの場合、個人の希望よりも優先されます。
2つ目は「個人の成長・育成」です。新しいスキルを身につけてもらう、昇進に向けて経験を積んでもらうといった目的の異動ですが、経営戦略と両立できる場合に実現しやすいのが実情です。
3つ目は「組織の活性化」です。メンバーを入れ替えることで業務のマンネリ化を防ぎ、長期的にモチベーションを保つ狙いがありますが、緊急性が低いため後回しになりやすい傾向があります。
これら3つをすべて同時に満たすのは難しく、筆者がこれまで見てきた中でも、経営戦略の実行が優先されるケースが多くありました。
前章で触れた「本人の準備が整う前に配置が決まる」状況は、この優先順位から生まれています。異動の打診を受けた人が戸惑うのは、自分の異動がどの目的によるものなのかが見えにくいからだと感じます。
実は現場の上司も納得していないことがある
異動に戸惑うのは、異動する本人だけではありません。部下を送り出す現場の上司も、人事の判断に納得していないケースが少なくありません。背景にあるのは、上司と人事とで見ているものが違うのです。
現場の上司が重視するのは、「今、この部署に必要な仕事ぶり」です。ルーティン業務を確実にこなしてくれるか、仕事を任せやすいか、といった点です。
一方、人事が見ているのは、「会社全体のニーズ」と「本人のポテンシャル」です。別の環境でより活躍できる可能性はないか、今の部署にとどまることで成長の機会を逃していないか、という視点で判断します。
この視点の違いが共有されないまま異動が決まると、上司には「部下を取られた」という不満が残り、異動させられた本人は「何か問題があったのでは」と不安を感じます。双方に不信感が残り、それが離職につながったケースも見てきました。
こうしたすれ違いを防ぐには、異動を決める前に人事が上司にヒアリングを行い、「あなたの部下は優秀なので、会社全体で活躍してもらいたい」と意図を伝えておくことが有効です。
上司が異動の意図を理解していれば、本人にも前向きな言葉をかけて送り出しやすくなります。
事例から学ぶ「異動の理由を説明する重要性」
筆者の経験ですが、異動を機に離職を決めた人の話をよく聞きます。「突然の異動は何かの懲罰だと感じた」「自分のキャリアを無視された」「将来が見えなくなった」などの感情です。
ある製造業の事例ですが、営業成績が良い営業職を、急に企画部門に異動させました。経営層は「営業視点を企画に活かしたい」という判断でしたが、本人には十分な説明がありませんでした。
結果、本人は「営業から外された=降格と同じ」と受け取り、3ヶ月後に退職。その後任を探すのに苦労し、企画部門の立ち上げも遅延しました。
別の事例では、人事異動の判断基準を社内ポータルで公開し、異動候補者が事前に面談で「なぜあなたが対象か」を聞く仕組みを導入した企業があります。すると、同じ異動でも「自分たちの成長が期待されている」と受け取られ、適応が早く、離職率も低下しました。
異動を戦略的に実現するためのポイント5つ

5つのチェックポイント
ここまでの事例から分かるように、異動がうまくいくかどうかは、判断の段階でどこまで確認できているかに左右されます。
筆者が過去、異動を計画した際に確認していた5つのポイントを紹介します。
- 経営戦略と連携しているか(短期穴埋めではなく中期戦略か)
- スキルセットが適合しているか(実績≠適性。育成計画を確認)
- キャリア希望と矛盾していないか(矛盾時は「長期パスを保証」と説明)
- 受け入れ上司が育成体制を整えているか(「人数が埋まればいい」では失敗)
- 現在の部署の業務支障はないか(引き継ぎと代替人員を確認)
異動後1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月で確認したいこと
異動は、辞令を出したら終わりではありません。筆者の経験では、異動後にどれだけフォローできたかによって、その人が異動先に定着できるかどうかが大きく変わりました。
目安として、異動から1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の3回、面談の場を設けることをおすすめします。
1ヶ月後の面談では、新しい環境に慣れてきたか、人間関係で困っていることはないかを確認します。この時期は、業務そのものよりも、職場になじめているかどうかが本人の不安の中心になりやすいためです。
3ヶ月後の面談では、業務をどこまで理解できているかを確認します。業務に慣れてくる一方で、「この異動は自分のキャリアにとってどんな意味があるのか」と考え始める時期でもあるため、キャリアへの不安が出ていないかもあわせて聞き取ります。
6ヶ月後の面談は、異動先に定着できているかを最終的に確認するタイミングです。ここで課題が見つかった場合は、受け入れ上司と連携して対応を検討します。
明日から始める3つの行動
① 異動判断の基準書をつくる
異動の判断が担当者ごとにばらつくと、本人から見て「なぜ自分なのか」が分からない配置が生まれやすくなります。人事部内で判断基準を文書にまとめておけば、判断を統一でき、恣意的な配置も防げます。
② 異動理由の説明をテンプレート化する
説明の内容が担当者によって変わらないよう、本人に伝える項目をテンプレートにしておくのがおすすめです。少なくとも「なぜあなたが対象なのか」「異動後にどのようなキャリアパスが考えられるか」「期待している役割」「困ったときの相談先」の4つは、必ず伝えるようにします。
③ フォロー面談の日程をあらかじめ組んでおく
前述のフォロー面談は、「落ち着いたらやろう」と考えていると、日々の業務に追われて後回しになりがちです。異動を決めた時点で、1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月の面談日を予定として入れておくことで、確実に実行できます。
筆者後記|「異動させられる人の特徴」を深掘りすれば、「その企業が組織人事をどう考えているか」が見えてくる
異動は、経営戦略と個人のキャリアを結ぶ、最強の施策になり得ます。そのためには、判断基準を明確にし、異動の理由を丁寧に説明し、その後の育成にしっかり向き合いましょう。
長年の経験の中で気付いたことは、異動に透明性を持たせた組織は、必ず人が育つようになるということです。
明日から、あなたの組織の異動プロセスを一度見つめ直してみませんか。その過程で浮かぶ課題こそが、組織全体を変え始めるきっかけになるのです。
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