初対面なのに妙に馴れ馴れしい人もいれば、何年一緒に働いても壁を感じる人もいる。人との距離感は、これほどまでに人によって違うものです。
最近では、こうした距離感やパーソナルスペースの感覚がずれている相手を指して、「距離感バグってる人」と呼ぶことがあります。SNSから生まれたスラングとして知られていますが、実は職場でも他人事ではありません。
「あの人、ちょっと距離感バグってるよね」で笑って済ませる前に、知っておきたいことがあります。相手との関係性を見誤った言動は、コミュニケーション上の些細なズレでは済まされず、パワーハラスメントと紙一重になりうるのです。この記事では、距離感バグという現象を職場や人間関係の観点から整理しながら、フリーランスだからこそ築ける、自分に合った距離感との付き合い方を考えていきます。
"距離感バグってる人"は迷惑な人か、それとも現場で見過ごせないリスクか?
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現場や職場で、やけに距離感が近い人に戸惑った経験はありませんか。
初対面、もしくは関係が浅いはずなのに、いつの間にか恋愛や家庭の事情などプライベートな内容まで踏み込んでくる。物理的に話す時の距離が近く、平気でパーソナルスペースに入り込んでくる。こうした人を指して「距離感バグってる人」と呼ぶことがあります。もとはSNSから生まれたスラングですが、決して他人事ではありません。
なぜなら、これと同じ言動は、職場では立派なパワーハラスメントとみなされる可能性があるからです。
厚生労働省は、パワーハラスメントにあたる行為の一つとして、身体的な攻撃や精神的な攻撃と並び、「私的なことに過度に立ち入ること」、いわゆる個の侵害を正式に類型として定めています。職場のパワーハラスメントに該当する行為類型として、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)の6つを整理しました。
相手との距離感を見誤る言動は、もはや「ちょっと変わった人」の話では済まされません。
実際、日本労働組合総連合会の調査によると、パワハラを受けた人のうち、この個の侵害にあたる言動を経験した人は23.2%にのぼります。実に4人に1人が、距離感の踏み込みすぎによって傷ついている計算になりました。
悪意はなくても、相手の領域に無自覚に踏み込んでしまう。それが「距離感バグってる人」の厄介なところです。職場という限られた空間で、互いの心地よい関係性を確保することは、想像以上に繊細で難しいテーマなのです。
"距離感バグってる人”を含めた「社内のコミュニケーション」を変えたのは、言葉ではなく評価の仕組み

距離感がバグってる人がいると、様々なトラブルの種になりかねません。しかし、それを企業の力だけで正すのは簡単ではありません。
多くの企業では、「求められる人物像」や行動指針を掲げ、研修で周知することで対応しようとしています。しかし、言葉として示すだけでは、現場の行動が変わるとは限りません。
実際に取材したある企業でも、同じ壁にぶつかっていました。以前から、社員に求める「人間力」を明文化し、社内で共有していたといいます。ところが、評価制度そのものは実績のみで判断される仕組みのまま。結果として、現場では目先の成果を優先する空気が強くなり、せっかく掲げた人間力は、なかなか浸透していかなかったそうです。
転機になったのは、評価制度そのものに手を入れたことでした。人間力の項目を評価基準へ組み込み、査定のタイミングで上司と話しながら「できているかどうか」をチェックする。すると、社員一人ひとりにとって、何が求められているのかが具体的に見えるようになりました。抽象的だった「あるべき姿」が、日々の行動として意識されるようになったのです。
その結果、社内の信頼関係や協力体制は、目に見えて向上したといいます。言葉で伝えるだけでは届かなかったものが、仕組みに落とし込み、繰り返し観測することで、ようやく根づいた。距離感や人間関係といった曖昧なテーマほど、意識だけに頼らない工夫が必要なのかもしれません。
距離感バグを回避し、フリーランス人生を充実させるなら"行動を観測できる仕組み"をつくると近道かも
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主観が強すぎるフリーランスは、“距離感がバグってる人”と似ている状態…とも言えるかもしれません。
例を一つ挙げるなら、フリーランスとして働いていると、つい自分への評価を「売上」や「年収」といった数字だけで測ってしまいがちです。「去年より年収が上がった」「収入が下がってきたから、もっと頑張らないと」。収入は数値で測れるので分かりやすく、自分の頑張りもそのまま反映されやすいからこそ、判断の中心に置きたくなる気持ちはよく分かります。
しかし、収入という物差しだけを追いかけていると、本当に大切なものを見失うリスクがあります。たとえば健康や家族との関係、仕事とは関係のない趣味や生きがいなど。これらは数値化しづらく、後回しにされやすいものばかりです。気づいたときには、収入は増えていても、心も体も限界寸前だった、というケースも珍しくありません。
これは、周りを見れなくなっている“距離感がバグってる人”から、だんだんと人やチャンスが遠退いていく構図と重なるように感じます。
ここで参考になるのが、「人間力」を評価制度に落とし込んだ企業の考え方。「人間力」という曖昧な概念も、言葉で示すだけでは浸透せず、評価制度に組み込んで定期的にチェックする仕組みに変えたことで、ようやく根づきました。同じように、収入以外の大切なものや距離感も、意識するだけでなく、行動として観測できる仕組みに落とし込むことが有効です。
たとえば、スマートウォッチで日々の健康状態を把握しておく、週に〇回以上は家族と食事をすると決めておく、仕事とは無関係に夢中になれる趣味を持っておく、そして相手とコミュニケーションを取る際のルールを決めておく。会社という後ろ盾がない分、フリーランスは自分自身で「観測する仕組み」を設計する必要があります。同時にそれは、誰にも縛られず、自分に合った形で自由に設計できるということでもあるのです。
自分の心地よい距離感で働けることも、フリーランスの立派なスキル
人との距離感は、意識してすぐに変えられるものではありません。だからこそ、自分の感覚に無理に蓋をするのではなく、それに合った環境や関わり方を選べることは、フリーランスならではの強みです。とはいえ、どんな案件やクライアントとなら心地よい距離感で仕事ができるのか、一人で見極めるのは簡単ではありません。
相手との距離の取り方に、決まった正解はありません。だからこそ、誰かに相談しながら、自分に合った働き方や関わり方を整理していく機会があると助かる場面も多いのではないでしょうか。
TECHBIZは、フリーランスや副業で働く方のキャリア相談に対応しています。案件選びの軸や、クライアントとの関わり方の希望を整理することも、相談内容の一つです。この先の働き方に迷ったときの相談先として、活用いただけます。人との距離感への意識を、弱点ではなく働き方を選ぶヒントとして捉え直してみると、新しい選択肢が見えてくるかもしれません。
編集後記:距離感がバグってるのは、実はポジティブにも捉えられる
「距離感がバグってる人」と聞くと、ネガティブな面ばかりが注目されがちです。しかし、様々な方を取材していると、距離感がバグってることが必ずしも悪いことばかりではないと感じます。
実際、「距離感がバグってる」と言われる人が、社内外を問わず驚くほど広い人脈を築いていたり、本来なら得られないはずの助力を引き出していたりする人も少なくありません。
距離感に限った話ではありませんが、日本では一般的に眉をひそめられるような行動や姿勢が、起業家にはむしろ求められる場面もあるようです。
以前、海外で活動する投資家に取材した際、興味深い話を聞きました。日本では、一度事業に失敗すると「投資家に申し訳ない」と感じてしまい、次に起業しても同じ投資家に出資を頼めなくなる人が多いといいます。
ところが海外では、何度失敗しても、たとえその投資家にどれだけ損をさせていても、「いいビジネスプランがあるんだ」と平気で話しかけてくる起業家が珍しくないそうです。その投資家自身、最初は面食らったといいますが、大化けする会社をつくるには、それくらいのメンタルの強さが必要なのだと語ってくれました。
もし距離感がバグってる自覚があり、人間関係で失敗した経験がある方がいたら。それは、大きく成功する素質の一つなのかもしれません。

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