年末年始やお盆が近づくと、「帰省したくない」という言葉を目にする機会が増えます。実家や義実家との距離感に気を遣い、憂鬱な気分、いわゆる帰省ブルーに陥ってしまう。そんな経験に心当たりのある方も、少なくないのではないでしょうか。
しかし、この話から見えてくるのは、家族との付き合い方だけではありません。帰省のたびに感じるストレスほど、その裏には自分でコントロールできない状況や、役割に縛られる息苦しさが潜んでいるものです。今回は、帰省したくない気持ちの正体を入り口に、ストレスが生まれる構造、そしてフリーランスが大切にすべき視点について考えていきます。
「帰省したくない」人は、実は少なくない。帰省ブルーの正体とは

年末年始やお盆が近づくと、「帰省したくない」という気持ちがふと顔を出す人は少なくありません。
実際にヨムーノメイトにおける調査(※1)では、実家にも義実家にも帰省しないと答えた人が37.3%と最も多く、前年から7.6ポイントも増加しています。
義実家への帰省を「楽しみ」と答えた人は合わせて43.7%にとどまり、半数以上が手放しでは喜べていない現実も見えてきます。積水ハウスの調査(※2)でも、義実家への帰省で4割が「気を遣う」ことに悩んでいるという結果が出ています。
背景にあるのは、義理の家族との距離感や、子どもの世話、家事の分担といった具体的な理由です。
実家に帰るたびに気疲れし、憂鬱な気分、いわゆる帰省ブルーに陥ってしまう人も珍しくありません。近年は、夫婦それぞれが自分の実家へ帰る「セパレート帰省」というスタイルも広がりつつあり、家族との付き合い方そのものを見直す動きが進んでいます。
「帰省したくない」という気持ちは、決して特別なものではなく、多くの人が抱えている、ごく自然なストレス反応と言えそうです。
(※1)出典:「年末年始の帰省に関するアンケート」ヨム―ノメイト(PR TIMESより)
(※2)出典:「年末年始に関する調査」積水ハウス株式会社
帰省ブルーの正体は「コントロールできなさ」にある
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「帰省したくない」と感じる理由は人それぞれですが、その根っこには、ある共通した要因が潜んでいます。
それは、滞在日程や過ごし方を、自分では決められないという感覚です。
職場のストレスを説明する代表的な理論に、「コントロールモデル」というものがあります。
仕事の量や責任といった要求度が高く、それに比べて自由度や裁量権が低いと、強いストレスにつながりやすいとされています。実は、これと同じ構造が帰省にもあてはまります。実家や義実家では、家族の予定や役割分担に合わせざるを得ず、自分の裁量が及ばない場面が集中しやすいためです。
もうひとつの理由が、役割の衝突です。
複数の役割を同時に担う際に生じる心理的な緊張は、役割葛藤と呼ばれ、職場でのストレス要因としてもよく知られています。
「娘や嫁」としての立場と、自分自身の家族を持つ大人としての立場がぶつかり合うことで、憂鬱な気分が生まれやすくなるのです。義実家との関係では、こうした境界線の曖昧さがネガティブな感情の核になるとも指摘されています。
つまり帰省ブルーとは、実家や義実家という限られた場面だけの話ではなく、コントロールできない状況に置かれたときに、誰にでも起こりうる自然な反応だと言えそうです。
「帰省ブルー」をもとに考える、裁量ある働き方から見えてくるもの
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コントロールできない状況がストレスを生むのだとすれば、その対極にあるのが、裁量が大きく、役割に縛られすぎない組織です。実際に採用広報の取材を重ねていると、職員のモチベーションが高い企業には、共通する空気があると感じます。
たとえば、ある企業では、自分の所属部署とは別のプロジェクトに手を挙げて参加しても、咎められるどころか周囲から応援されるといいます。
「本業以外に首を突っ込むな」という発想がなく、興味の向くままに挑戦できる環境が整っているのです。また、役割に対する意識の低さも印象的でした。
「若手だから」「上司だから」という上下関係にとらわれず、若手が経営陣に直接意見を伝えたり、上司が部下から学ぶ姿勢を持っていたりする企業もあります。
役割はあくまで役割であり、人としての関わり方までは縛らない。そうした距離感が、心地よい風通しの良さを生んでいるのかもしれません。
フリーランスという働き方も、この文脈で語ることができます。
会社員と比べて裁量が大きく、役割によるプレッシャーを感じにくい場面が多いのは事実です。誰かの部下という立場から離れ、自分の意思で仕事を選び、進め方を決められることは、フリーランスならではの魅力といえるでしょう。
一方で、組織の重要な意思決定に関わる場面では、あくまで「部外者」という立ち位置になりやすく、決定権そのものは持ちにくいという側面もあります。ただ、それは裏を返せば、組織内の複雑な人間関係や板挟みの構造から、一歩距離を置いて働けるということでもあります。
「コントロールできる範囲」を自分の手に取り戻すこと。働き方を見直すことは、そのための、身近で現実的な選択肢のひとつだと言えそうです。
「コントロールできないストレス」から、少し自由になってみませんか
実家や義実家に帰るたびに、家族の中での役割にがんじがらめになる。そんな感覚に覚えがある方は、日々の働き方の中でも、知らず知らずのうちに同じような窮屈さを抱えていないでしょうか。
「部署の役割」「立場上の役割」に縛られ、本当はやってみたい仕事や働き方に、一歩踏み出せずにいる。そんな声が、TECHBIZに寄せられることがあります。
TECHBIZは、フリーランスや副業として働く方、これから新しい働き方を検討したい方のキャリア相談に対応しています。「今の役割から少し自由になりたい」という漠然とした気持ちも、話しているうちに輪郭がはっきりしてくることがあります。
年末年始やお盆に家族との距離感を見直すように、自分の働き方との距離感も、たまには誰かと一緒に見直してみる。それが、これからの選択肢を広げる、小さな一歩になるかもしれません。
編集後記:「ポジティブ」の裏側にこそ、インサイトは眠っている
以前、とある食品メーカーのマーケティング責任者に取材した際、印象に残っている言葉があります。顧客インサイトの見つけ方について尋ねたとき、「一般的なイメージの裏側にこそ、本当のインサイトがある」と話してくれたのです。
たとえば「子どもに手料理を作る母親」と聞くと、多くの人はポジティブなイメージを抱くでしょう。しかし、母親自身の目線に立ってみると、また別の顔が見えてきます。仕事で疲れて帰ってきても、「家族のために」と体に鞭打って台所に立つ。そうした苦労や苦しみに寄り添うことこそが大切なのだと、その方は語ってくれました。
「帰省」もまた、同じような構造を持つテーマなのかもしれません。「子どもや孫に会える」「親孝行ができる」と、一般的にはポジティブに語られやすい行為です。しかし今回取り上げた「帰省ブルー」のほかにも、最近では「孫疲れ」という言葉が生まれているように、帰省をめぐる感情は一筋縄ではいきません。
それは「帰省したい人」と「したくない人」に、単純に分けられる話ではないのだと思います。「実家に帰って孫の顔を見せたいけれど、正直面倒でもある」「孫と遊ぶのは楽しいけれど、疲れてしまう」。そんな相反する気持ちは、きっと誰の中にもあるのではないでしょうか。
ポジティブなイメージの裏側に、どんな本音が隠れているのか。その視点を持つことこそが、新しいインサイトの種になるのかもしれません。

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